2020年2月2日は栄光学園中学の入学試験が行われました。
コベツバでは、2月2日当日中に、2020年の栄光学園中学入試で出題された算数の、問題・解答PDF及び、解説動画・所感・難易度分析を公開しております。
また、合わせて2020年度の入試を受けて、来年度の受験生に向けた大まかな対策の方針を掲載しております。栄光学園を志望していらっしゃるご家庭の保護者様・お子様は是非ご覧ください。
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by 村中 公開: 更新:
2020年2月2日は栄光学園中学の入学試験が行われました。
コベツバでは、2月2日当日中に、2020年の栄光学園中学入試で出題された算数の、問題・解答PDF及び、解説動画・所感・難易度分析を公開しております。
また、合わせて2020年度の入試を受けて、来年度の受験生に向けた大まかな対策の方針を掲載しております。栄光学園を志望していらっしゃるご家庭の保護者様・お子様は是非ご覧ください。
全体感としては、例年通りの思考力問題の多さは一定見られるものの、算数をよく勉強してきた人にとっては「一度は見たことがある」または、「近しい問題を経験した記憶がある」問題が多かった印象です。1番は関西の甲陽学院、2番は開成、3番は多くの学校で出題されている正六角形内の反射、4番は問いの立て方こそ違うものの今年の女子学院でも類題が出題された比較的よく見る規則など、実は元となる題材は有名どころのネタを活用してきて、そこから栄光流に試行させる問題にアレンジしていると考えることができます。一方で3番などは、最低でも三角形の鏡の世界を経験していなければ、手が出なかっただろうとも思います。また、小問の階段を踏んで難易度をあげて、だんだんと頂に近づいていくような麻布の後半の問題と同様の作り方も例年どおりと言えます。
大問ごとにコメントしていきます。
(1)は計算。(2)から等差数列の和でややオーバーするものを探す。(3)が分母に注目して、分母の倍数個数で試行検証させる問題で栄光らしい印象の問題と言えます。
ネタになったと思われる問題は開成の時計算の難問。ほとんどの栄光受験生が経験していないと考えられるものの、ネタ元となった開成の難問をやったことがあれば「規則的なズレ」を捉えて(3)まで到達することができたのではないかと思います。勿論、そうでなくとも(2)までは合わせたいところです。
非常に有名な正六角形内の反射。ただし、あまり集団塾のテキストへの掲載は少ない印象で面食らった可能性が高い問題です。ベースになるのは三角形内の反射でこちらは比較的よくみる問題で、反射→鏡の世界→反射する辺で対象な図形をかく→正六角形を正三角形に割るという流れで解く問題でした。ただ、三角形型の反射はピラミッドの使い方が長方形型よりも見えにくくやはり三角形型の反射の経験がものをいう問題になったのではないかと想像します。
栄光らしい問題ですが、(2)までは大きな問題はないかと思いますが、(3)の上下の差に注目することができたかで比較的出来不出来が分かれたのではないかと想像します。また(4)は比較的解きやすいものの(5)は試行検証で終わるというオチでした。
今回の記事では、2/2実施の2020年栄光学園中の入試算数の問題から、大問3番の解説動画を配信いたします。
大問3番:
以下が栄光学園中学校の偏差値(80%合格ライン偏差値)です。
80%偏差値 | |
---|---|
サピックス | 62 |
四谷大塚 | 66 |
日能研 | 66 |
以下の表が近年の受験者数・受験倍率推移です。
受験者 | 合格者 | 倍率 | |
---|---|---|---|
2020 | 780 | 263 | 3 |
2019 | 845 | 263 | 3.2 |
2018 | 711 | 286 | 2.5 |
2017 | 690 | 259 | 2.7 |
2016 | 611 | 264 | 2.3 |
2020年度の出願者は、827名と昨年度の845名から微減となりました。2019年度の倍率が3倍を突破したことから揺り戻しが発生したものと思われます。それでも2018年の出願者が749名であったことを考えると、全体として増加傾向であることに変わりはありません。
以下の表が合格最低点等とその得点率を示したものです。
4科目
合格最低点 | 合格者平均点 | 受験者平均 | |
---|---|---|---|
過去6年間 の平均 | 145.8(60.8%) | 159.5(66.5%) | 137.4(57.3%) |
2020 | 141 | 154.5 | 130.9 |
2019 | 142 | 156.2 | 129.9 |
2018 | 143 | 156.7 | 135.2 |
2017 | 159 | 172.6 | 149.1 |
2016 | 140 | 154 | 134.2 |
2015 | 150 | 163.1 | 145.1 |
算数
合格者平均 | 受験者平均 | |
---|---|---|
過去6年間 の平均 | 47.68(68.1%) | 38.13(54.5%) |
2020 | 47.9 | 38.1 |
2019 | 49.2 | 37.2 |
2018 | 44.1 | 36 |
2017 | 55.3 | 43.9 |
2016 | 41.8 | 32.8 |
2015 | 47.8 | 40.8 |
年々、倍率が上がっているものの合格最低点が飛躍的に上がっているわけではありません。合格者平均もあまり変わらない水準であることや、受験者平均の差が年々開いていることから、ボーダー層以下が挑戦校として栄光に挑むケースが増えているのではないかと推察することができます。
出題分野に合った+αの対策が必要
栄光学園中の2011年から2020年までの過去10年間の配点を推定・集計した、入試問題の分野別出題シェア・比率は以下のグラフのようになっています。
(なお、正確な配点は公表されていないため、あくまでも推定値での算出となります。)
出題得点シェアが高い順に
このようになっており、数の性質、論理・推理、場合の数、立体図形の主要4分野だけで全体の5割近くを占めています。
数の性質は麻布、聖光、開成などの他校と比較して出題頻度が高めであり、論理・推理の分野が特に高めに設定されています。論理・推理は麻布でも速さに次いで2番目(ここ6年で11%)に頻出の分野ですが、それと比べても特に多めに出題されています。
そして、特筆するべき点はなんといっても「文章題(割合有)」と「平面図形(割合有)」の出題頻度の低さ(それぞれ4%程度)でしょう。これは麻布、開成とも共通している部分ですが、難関校では、通常の集団塾のテキストにおいて30〜40%程度の比重を置かれているこれらの分野からの出題頻度が低いということで、栄光学園中学を志望する受験生は、+αで志望校別の対策をしていく必要があります。
また、例えば平面図形の出題が低いからといって、学習を軽視してはいけません。立体図形の問題を解くためには平面図形のレベルでの理解が大切になってくるためです。
そして、麻布や開成などで出題率トップである分野「速さ」については、栄光では頻出分野とは言えないように思えます。しかし、図形・点の移動や水と水グラフといった別の分野でも、速さの技術を使うことも少なくないため、こちらもあまり軽視して良いわけではありません。
直近10年間で出題された問題を難易度レベル別で分けると、以下のような比率になります。
A=基礎レベル/ミスなく合わせたい
B=応用レベル/出来が分かれる
C=発展レベル/出来なくても問題ない
レベルABが占める割合が90%と高く、開成と比較するとレベルCの出題頻度はそこまで高くありませんが、麻布と同程度で、聖光と比較するとレベルCの出題比率が高いため注意が必要です。
栄光学園の直近6年間の算数の合格者平均得点が68.1%、受験者平均が54.5%であることを考えると、A問題を堅実に正答し、B問題を半分近く正答すれば、70%となり十分合格可能ラインに到達できることがわかります。
レベルCの問題に挑んで時間をかけてしまうことなく、問題文の読み違え、計算ミスといったケアレスミスをしていないか、しっかり見直しを進めながら手堅くレベルAを取りきり、自分の目標とする得点に合わせてレベルBを取れるようにしていきましょう。
3-1、3-2において、出題の多い単元と全体の難易度比率を示しました。ここからは、単元ごとの難易度について見ていきましょう。
まず、「A=基礎レベル/ミスなく合わせたい」問題です。
全体的な出題比率と比べて、レベルAの中で占めている比率が高いのは、「数の性質」や「水と水グラフ」の分野です。数の性質は頻出分野であるため、栄光受験生ならば、対策を練って挑めているのではないかと思われます。
逆に、占めている割合が低いのは「場合の数」や「論理・推理」の分野で、この単元は斬新な問題が作られやすいという特色があり、しっかり誘導に乗らないと序盤から進め方が分からなくなってしまうことがあります。
次に、「B=応用レベル/出来が分かれる」問題です。
全体的な出題比率と比べて、レベルBの中で占める割合が高いものとして、まず「場合の数」が挙げられます。レベルCにおける場合の数の比率(後述)が全体的な出題比率とあまり変わらないことから、「場合の数」は序盤の問題で少し捻られていることがあっても、後半の問題が「難解で解けなくても良い問題」というわけではなく、出来不出来が分かれる分野であることがわかります。
また、「数の性質」も、レベルAと同様レベルBにおいても高い比率を占めます。レベルCでは低いことから、「数の性質」の分野は、他の分野と比較して高い得点率を維持しやすい分野だと考えられます。
そして、「論理・推理」はレベルBでも相変わらず低くなっています。この分野は安全に得点できる問題数が少ないようですね。
最後に、「C=発展レベル/出来なくても問題ない」です。
出題比率に比して圧倒的に「論理・推理」が高いですね。終盤の問題まで解ききることは難しいでしょう。対策については後述します。
そして、頻出ではありませんが「速さ」の分野も、出題比率を考慮するとかなり終盤の問題が難しいようなので、注意したいところです。
栄光学園の算数は、2015年以降、基本的に制限時間60分、大問4題の構成になっています。
しかし、それ以前や2017年でも大問5題であることを考えると、今年度も4題である保証はありません。
「試験本番で第4問まで解き終わって安心していたら実は第5問があった!」となると大変ですので、試験開始直後にまず30秒〜1分程度をかけて大問の構成や出題範囲を把握するように心がけましょう。
栄光学園の算数は問題文が長く、設定が複雑なものが多いため、漏れなく条件を処理していく必要があり、集中力も要求されます。
問題に詰まったら「まだ使ってない条件の確認」や「各問題のつながり」を意識しましょう。(1)が(2)(3)のヒントになっていることも多く、出題者がなぜその小問を作成したのかが見えてくるはずです。
特に頻出の「論理・推理」の問題では、しっかりと問題の誘導に乗ることが大切です。
また、他の学校と比較して、大問1つあたりの小問の数が多いため、解けるところまで解くことで得点を稼ぎやすい構成だと言えます。
3章で、特に「論理・推理」や「速さ」の分野の終盤の問題は合否を分けない難問である可能性が高いことを示しました。これらの大問を考えに考えて時間を費やしてしまうのは要注意です。
2分程度考えても解決の指針すら立たないようならば、すぐに一旦飛ばしましょう。
ある大問に時間を費やしてしまうと、ただでさえ問題文が長いので、次の大問の設定の理解が間に合わず、簡単なレベルABを落としてしまいかねません。
受験本番では、「テスト時間が半分過ぎたのにまだ目標の半分も得点できていない!」といった場合は非常に焦ってしまいますし、ミスの発生にも繋がります。
そのため、他校では得意な順、時間的コストが低い順、あるいは解法が分かりきっている順に解くことを推奨しています。
しかし、栄光学園では、早めに取り組んでおくといい問題として「問題文が長いもの」という基準も有用です。
特に「論理・推理」の問題は、終盤から取り組むと問題の設定を満足に処理しきれずに落としてしまいかねないので、序盤に取り組むと良いでしょう。しかし、4-3で書いた通り、時間のかけ過ぎには十分注意が必要です。
他校と比較しても特に出題頻度が高いです。
栄光では終盤の問題が捨て問になることが多い分野ですが、とにかく誘導に乗ることを意識しましょう。
平面図形の分野において「円があったら中心に向かって線を引けばいい!」と処理できるような、「こうすればできる」といった鉄則のようなものはなく、解き方は様々であるため、問題文を有効活用しましょう。
ある問題が解けても、全く同じ設定の問題が再度出されるわけではないので、「処理能力の向上」と「問題のつながりを意識する」ための訓練を積んでいきましょう。
2020年4番(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
●栄光学園中学のハイレベルな論理・推理問題は、塾の毎週の思考力問題でももちろん対策可能ですが、思考力の要素を「数・パズル型問題」「読解」「整理」「試行検証」「誘導」に分解・体系化したこちらのサービスで体系的に強化することが可能です。
約数倍数の問題であれば、素因数分解して〜といったテクニックがありますが、栄光学園の数の性質の問題は、そういった技術とは別に、「問題文読み取り能力」が求められることが多く、序盤の問題では手を動かしての実験を要求されることがあります。
2017年2番(1)
(2)
(3)
栄光学園では平面図形はほとんど出題されませんが、立体図形は頻出分野です。
立体図形は中学受験に限らず大学受験まで得意不得意が分かれる分野で、空間把握能力が高い人は即座に理解できても、そうでない人にとってはどうしてもイメージするのが難しくなりがちです。
その際の注意点は、なんといっても「3次元は2次元で考える」、つまり、立体を上から見たり、横から見たり、展開図を書いてみたりという試行錯誤のステップを通じて、いきなり立体そのものを考える」のではなく「一旦平面で考えてから立体のイメージを固めていくと良いでしょう。
特に栄光学園では展開図の問題が繰り返し出題されていますので、有効な手法です。
2019年2番(1)
(2)
(3)
(4)
最後にお知らせとなります。
中学受験コベツバでは、上記の分析・出題傾向を踏まえて、栄光学園中学志望の子供たちを対象に、以下のサービスを配信しております。
栄光学園中学志望者がライバルから頭1つ突き抜けるための発展技術を体系的に学ぶ。5年生・6年生対象。
栄光特有の「長大な問題文」「独特な出題分野」への徹底対策。
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以上です。
来年度以降の志望の方にとって、少しでも今後の算数の学習のご参考になれば幸いです。
中学受験コベツバは、栄光学園を志望されている小学生とその保護者様をエンパワーし続けられる存在になるべく引き続き頑張って参ります。