2020年2月1日に早稲田中学の1回目の入学試験が行われました。
コベツバでは、2020年の早稲田中学入試(第1回)で出題された算数の解説動画・所感・難易度分析を公開しております。
また、合わせて2020年度の入試を受けて、来年度の受験生に向けて、早稲田中学の入試傾向をデータ分析から把握し、合否を分ける単元・対策法を掲載しております。早稲田中学を志望していらっしゃるご家庭の保護者様・お子様は是非ご覧ください。
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by 村中 公開: 更新:
2020年2月1日に早稲田中学の1回目の入学試験が行われました。
コベツバでは、2020年の早稲田中学入試(第1回)で出題された算数の解説動画・所感・難易度分析を公開しております。
また、合わせて2020年度の入試を受けて、来年度の受験生に向けて、早稲田中学の入試傾向をデータ分析から把握し、合否を分ける単元・対策法を掲載しております。早稲田中学を志望していらっしゃるご家庭の保護者様・お子様は是非ご覧ください。
全体感としては、レベルA60%・レベルB40%と例年より易化した印象を持ちました。特に早稲田の特徴と言える大問2番の応用・発展の図形のレベルが大幅に下がり、全問レベルAとフレンドリーな問題になったことが全体の難易度構成に影響したと考えることができます。
今後この傾向が続くかどうかは不明であるものの、傾向が変化した可能性を考慮しておく必要があるでしょう。3番以降は、場合の数・速さ・立体とこちらの構成や難易度は例年通りでレベル感もレベルAとBが半々程度と例年通りといえます。
以下、3番以降の大問ごとのレベルBの問題にコメントしておきます。
聖光学院、海城でも近年出題されていた時間のイチイチが早稲田に回ってきました。応用技術でありテキスト掲載回数が少ないものの、しっかりと習得できていた人にとっては非常に軽い問題だったと思います。(4)も意味を整理して考えれば(3)までで既に出しているものを活用して短時間で処理できる問題でした。
角速度と直径をかけて実際の速度という「速さのの比の比」という早稲田らしいテクニカルな問題でした。「の比の比」「速さのの比の比」という難関最難関頻出の技術にどこまで馴染んで使いこなすことができるかが成否を分けた問題と考えられます。
(1)において2つの切り方がそれぞれ独立して考えられることをベースに、(2)で一気に作図するのではなく、前面を書いてから考えていく姿勢を持つと作図しやすかったのではないかと思います。
また、(3)は(2)までの形の延長戦にあるものとして、入れ子構造の八面体を知識として知っていればたどり着くことができたのではないかと想像します。応用技術の習熟度で差が出た問題と解釈します。
今回の記事では、2/1実施の2020年早稲田中学(第1回)の入試算数の問題から、大問3番の解説動画を配信いたします。
大問3番:
以下が早稲田中学校の偏差値(80%合格ライン偏差値)です。
2月1日 | 2月3日 | |
---|---|---|
サピックス | 58 | 62 |
四谷大塚 | 64 | 66 |
日能研 | 64 | 66 |
以下の表が近年の受験者数・受験倍率推移です。
倍率(2月1日)の推移
受験者 | 合格者 | 倍率 | |
---|---|---|---|
2020 | - | - | - |
2019 | 663 | 245 | 2.7 |
2018 | 737 | 242 | 3.0 |
2017 | 692 | 238 | 2.9 |
2016 | 680 | 239 | 2.8 |
倍率(2月3日)の推移
受験者 | 合格者 | 倍率 | |
---|---|---|---|
2020 | - | - | - |
2019 | 875 | 275 | 3.2 |
2018 | 980 | 254 | 3.9 |
2017 | 952 | 248 | 3.8 |
2016 | 903 | 263 | 3.4 |
2019年まで1日目/2日目の倍率は隔年現象から揺れはあるもののほぼ変わっていません。
以下の表が合格最低点等とその得点率を示したものです。
2月1日(4科目)
合格最低点 | 合格者平均点 | 受験者平均 | |
---|---|---|---|
2020 | - | - | - |
過去5年間 の平均 | 114.6(57%) | 126.44(63%) | 104.2(52%) |
2019 | 118 | 131.6 | 109.1 |
2018 | 121 | 131.8 | 109.1 |
2017 | 108 | 118.6 | 97.6 |
2016 | 126 | 137 | 115.3 |
2015 | 100 | 113.2 | 89.9 |
2月3日(4科目)
合格最低点 | 合格者平均点 | 受験者平均 | |
---|---|---|---|
2020 | - | - | - |
過去5年間 の平均 | 126(63%) | 137.7(69%) | 109.2(55%) |
算数(第1回)
合格者平均 | 受験者平均 | |
---|---|---|
2020 | - | - |
過去5年間 の平均 | 34.9(58%) | 25.8(43%) |
2019 | 38.2 | 28.9 |
2018 | 33.1 | 23 |
2017 | 31.1 | 23.6 |
2016 | 42.1 | 33.5 |
2015 | 29.9 | 20.1 |
例年、算数は大問5題構成が基本となっており、そのうち最初の大問2つは小問集合で、各小問3題ずつになっています。
大問1 | 2〜5行程度の小問集合3題 |
---|---|
大問2 | 図形の小問集合3題 |
大問3〜5 | 統一テーマで3〜4題 |
これで50分60点満点なので、配分は各大問10分程度、12点程度が目安ということになります。ここまでは第1回、第2回で共通です。
第1回、第2回共に試験時間や問題構成は変わりませんが、特筆すべき相違点はやはり合格に必要な得点率でしょう。
2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 5年平均 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
第1回 | 受験者平均 | 33.5 | 23.6 | 23 | 28.9 | 34.7 | 28.74 | 合格者平均 | 42.1 | 31.1 | 33.1 | 38.2 | 45.1 | 37.92 | 受験者平均(%) | 55.83% | 39.33% | 38.33% | 48.17% | 57.83% | 47.9% | 合格者平均(%) | 70.17% | 51.83% | 55.17% | 63.67% | 75.17% | 63.20% |
第2回 | 受験者平均 | 30.7 | 31.1 | 29.9 | 31.2 | 25.7 | 29.72 | 合格者平均 | 43 | 40.9 | 41.7 | 41.6 | 35.2 | 40.48 | 受験者平均(%) | 51.17% | 51.83% | 49.83% | 52.0% | 42.83% | 49.53% | 合格者平均(%) | 71.67% | 68.17% | 69.5% | 69.33% | 58.67% | 67.47% |
この表からもわかるように、第1回と第2回の合格者平均得点率は5%ほど異なります。5%というこの差は算数に換算すると1問ほどの差になります。このように得点率が高い理由としては、やはり母集団の差が挙げられるでしょう。第1回の時点では別の中学を受けていた方が併願校として早稲田を受験するため、狭き門となるわけです。
また、この表から読み取れる内容として、早稲田は年度によって得点率が乱高下すること、そして、「得点率8割を目指す」といった高得点勝負ではないことが挙げられます。
図形を制するものが早稲田を制する!
早稲田中第1回入試問題の過去7年間(2014年〜2020年)の配点を推定・集計した、分野別出題シェアと出題比率のグラフは以下のようになります。
(なお、正確な配点は公表されていないため、あくまでも推定値での算出となります。)
出題得点シェアが高い順に、
こうして見ると、「早稲田で最も大切な分野は速さなのか?」と思えてきますね。
しかし、早稲田では図形・点の移動、平面図形、立体図形を合わせると43%近くを占めていることに注目しましょう。
他の学校では、「立体図形が出ている代わりに平面図形が少ない」といったようなトレードオフの関係になっていますが、早稲田ではこの2つともが満遍なく出るので、総合して図形の問題がとても多くなっています。
その理由は、毎年大問2が図形の小問集合であるために20%の出題率が確定しており、そして大問3〜5においても図形問題が頻出であるからです。
ここで頻出の図形と速さを足すと60%程度となり、かなり偏りがあると言えるでしょう。直近5年の第1回の受験者平均が48%合格者平均が63%といったように、低得点率での勝負になる中で、図形や速さを得意分野としておくことが必要です。
第2回においても、図形が最も頻出であるという傾向には変わりありません。
第1回の直近7年間で出題された問題を難易度レベル別で分けると、以下のような比率になります。
A=基礎レベル/ミスなく合わせたい
B=応用レベル/出来が分かれる
C=発展レベル/出来なくても問題ない
早稲田の問題は基本的にオーソドックスなもので、「見たこともないし解法も全く思い浮かばない!」といったような問題は少ないことがわかります。 そして、3−2で示したように合格者平均を目指すには、A問題を完璧に取りきった上で、B問題を1/3以上取ることが重要だとわかります。
3-3,3-4において、出題の多い単元と全体の難易度比率を示しました。それでは、この章ではそれぞれの難易度レベルにおける単元比率を見ていきましょう。
まず、「A=基礎レベル/ミスなく合わせたい」問題です。
A問題に文章題が多いのは、大問1が小問集合になっているためであり、また大問1は比較的簡単であるためです。速さに関しては全体の出題頻度とあまり変わらないため、とりわけ簡単というわけではないようです。
次に、「B=応用レベル/出来が分かれる」問題です。
図形・点の移動と場合の数が若干難し目ではあるようですが、ほとんど出題割合通りで、特筆すべき点はありません。
最後に、「C=発展レベル/出来なくても問題ない」問題です。
レベルCに関しては、年に一問あるかないか程度であり、サンプル数が少なく、そこまで重要視せずとも良いでしょう。しかし、一般的に平面図形の問題は解きやすそうに見えて難しいことがあるので、わからない場合は一旦飛ばしましょう。
3で示したように、レベルAを取りきり、レベルBを1/3以上合わせていく(算数で差をつけていきたい人はそれ以上)ことが基本戦略になります。
オーソドックスな問題が多い分、難易度や計算量も一目見てわかりやすいので、時間がかかりそうだなと感じたら無理に考え込まず、別の問題に挑みましょう。
小問集合である大問1と2はレベルAであることが多いですが、まれに難しい問題が混ざっていることがあるので、無理に完答しようと粘らずに先に進みましょう。
大問1と大問2で合計1〜2問ミス、大問3〜5で(1)をとりきれば60点中28〜32点となり、これだけで50%近い得点になります。そこから大問3〜5でさらに取れそうなものを2問程度合わせれば(第2回なら3問ほど)、合格者平均程度の得点になります。
しかし、早稲田の第1回は、2019年は大幅難化、逆に2020年は大幅易化…といったように、問題によってかなりのブレがあります。問題が難しくて自分の目標点に到達しないという時は平均点も低いので、焦らずに見直しを優先して取れる部分を取りきりましょう。
算数を得意とする人、不得意な人によって目標は異なりますが、どのような人であってもレベルAを落とさないことが他の何よりも合格への近道となります。
普段の学習では時間をかけて難しい問題を解くことも重要ですが、入試では時間内に出来るだけたくさん正答することが目標です。落としてはいけない問題を確実に取りきり、難易度や計算量が理由で得点が難しい問題は一旦諦めるといった「取捨選択」が必須になります。
合格目標得点率は高くないので、1つ2つ解けなかったからといって焦る必要はなく、1周目に解く時は、解法の指針が思い浮かばなかった時点で飛ばしましょう。
早稲田は難問奇問が少ないため、問題に対して素早く解法の指針を立てられることと、計算力をつけることを目指しましょう。
前者に関しては、例えば、速さの問題が出た時に、「この問題は速さの問題だ!ダイヤグラム、線分図、比…っていろいろあるけど、この問題はこういう理由であの解法を選択しよう!」だとか、図形の問題が出た時に「この問題は求積の問題だから、分割して足すか、周りから足すか…どっちが楽だろう」といったように、普段から試行錯誤をする癖をつけて、解法やポイントを体系的に利用できるようにしましょう。
図形の解法を整理しましょう。
早稲田では様々な出題パターンがあります。
まずは問題で何を聞かれているのかを意識し、解法の選択の際は以下のように、自分の中で体系化して考えましょう。
1:求積
1-1 複雑な図形は分割するか周りから引く。
1-2 三角形の面積は、底辺×高さ÷2、面積比、相似比など様々な出し方がある。
2:角度
2-1 有名角の場合は、150°,75°,60°,45°,30°などの場合は正三角形や正三角形の半分の利用を考え、108°などの場合は正多角形の利用を考える。
2-2 具体値(27°)を聞かれている場合は外角や二等辺三角形、垂直、並行、合同、相似などを用いて計算する。
3:円
円や弧を見つけた場合は中心に向かって線を引く。
4:対称性
図形に対称性があれば、それを利用する。
5:線分比
求めたい部分を含むような相似を作る。
6:その他
図形を用いた場合の数、パズルや規則性のようなものなど様々。上手く誘導に乗る。
立体の場合は、以上に加えて、「立体を直接考えられない場合は、平面で考える」ことを意識しましょう。例えば、見取り図や展開図を使い、辺の長さや比を詳細に整理しましょう。過去に立体切断や影の問題が出題されていますが、同様に平面で考えることが理解の助けになります。
では、実際に過去問をみていきましょう。
平面図形に関しては2−2のように、有名角を用いない小問も出題されています。
2020第2回第4問(1) 平面 角度
立体に関しては求積問題が多いです。昨年の立体の問題も、上記のようにきちんと立体のポイントを理解していれば問題なく解けるでしょう。
2020第1回第5問 立体 求積
(1):立体は直接求められないので、分割するか周りから引くことを考えますが、今回は後者が有効です。
(2):立体の問題はそのまま理解しようとせず、平面で考えましょう。
(3):(2)を利用すれば今回は直接求められる形ですし、計算も簡単です。
速さの解法を整理しましょう。
速さの解き方については、本人の慣れ不慣れによってどの解法が早いか変わってきますが、よく出る問題の解法の傾向としては以下のようになります。
1:ダイヤグラム
移動区間が異なる、速度変化があって不規則、登場人物が多い、時間や速さと距離の条件が多い、といった場合は、横軸=時間と縦軸=距離のダイヤグラムを用いて視覚化し、整理するとうまくいきます。
情報を処理する際には相似を用いたり、同じ速度で同じ向きの場合には並行を用いたり、と平面図形の要素を使います。
2:線分図
①で示したような要素が少ない場合は線分図で整理した方が早い場合があります。視覚的には距離一定が描出されやすく、その解法を考える際には速さの比の概念を用います。
同じ区間を何度も往復する場合などは、周期などをつかって解くパターンが多く、速度変化や人数、時間など情報が多い場合、情報整理の手段としてはダイヤグラムに劣ります。
3:比
距離一定や時間一定などの問題に強いです。具体的に速さや時間が与えられてない場合は、とりあえず比を使って置き換えましょう。
4:その他
周期的に解く問題や、時計など、図形上を点が移動する場合など様々です。
早稲田の速さの問題においては、他の難関校と比べてダイヤグラムの出題頻度がかなり低く、第1回では7年中1回しか出題がありません。速さの比や差を使って解ける問題がほとんどで、開成のような、多くの複雑な条件をダイヤグラムで処理していくことを求められる問題はあまりありません。
実際に問題を見ていきましょう。
2019第1回第4問
(1)(2)では速度変化がなく、人数も少なく、書き込む情報量も少ないので①のような条件に当てはまりません。そのため、②のように線分図を用いると早いです。こうすると時間一定と距離一定で比を用いることができます。
(3)では歩数×歩幅=速さの「の比の比」を用います。
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