この記事では、2021年灘中学入学試験について、受験者数・平均点・合格最低点をご紹介した上で、1月16日・1月17日の試験(算数)の問題PDF/解答数値、プロ講師による所感・問題別難易度分析・全問解説動画掲載しております。
本試験を受験されたご家庭や灘中学志望者にとって、2021年の学校動向把握や問題の解き直しに役立てていただけるものとなっております。
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1:2021年入試の基本データ
1-1: 灘中学80%偏差値(サピックス/浜学園/日能研)
| サピックス | 浜学園 | 日能研 |
---|
2021 | 68 | 64 | 71 |
2020 | 68 | 64 | 72 |
2019 | 68 | 64 | 71 |
1-2: 灘中学の受験者・合格者数・受験倍率推移
| 受験者 | 合格者 | 倍率 |
---|
2021 | 650 | 227 | 2.86 |
2020 | 762 | 256 | 2.98 |
2019 | 708 | 262 | 2.70 |
2018 | 727 | 252 | 2.88 |
2017 | 667 | 242 | 2.76 |
2016 | 639 | 239 | 2.67 |
2021年はコロナウイルス感染リスクのため、地方からの遠征組が現象したため、受験者・合格者ともに減少していますが、倍率はほぼ一定であることが伺えます。
1-3: 灘中学の合格最低点・合格者平均点・受験者平均点
【3科目】
| 合格最低点 | 合格者平均点 | 受験者平均点 |
---|
平均 | 315(63%) | 341.8(68%) | 294.9(59%) |
2021 | 341 | 368.5 | 316.7 |
2020 | 320 | 347.9 | 297.6 |
2019 | 290 | 318.6 | 276.6 |
2018 | 322 | 348.7 | 300.0 |
2017 | 321 | 346.3 | 300.3 |
2016 | 296 | 320.7 | 278.2 |
合格最低点・合格者/受験者平均ともに過去6年の中で最高点となりました。
【算数(2日間の合計)】
| 合格者平均 | 受験者平均 |
---|
平均 | 129.6(65%) | 101.9(51%) |
2021 | 150.8 | 119.4 |
2020 | 143.2 | 110.8 |
2019 | 106.6 | 83.0 |
2018 | 135.7 | 107.4 |
2017 | 125.5 | 97.5 |
2016 | 115.9 | 93.5 |
算数にフォーカスして考えると、算数が過去最高の平均点となっていることが、4科目の平均点を押し上げた原因の1つであると推定することができます。
【算数1】
| 合格者平均 | 受験者平均 |
---|
平均 | 64.9(65%) | 50.6(51%) |
2021 | 83.0 | 65.1 |
2020 | 72.0 | 55.4 |
2019 | 49.8 | 38.5 |
2018 | 66.5 | 52.6 |
2017 | 63.1 | 49.1 |
2016 | 54.8 | 42.7 |
特に算数1の易化が昨年度以上に進んだことから、合格者平均が高騰しており、1日目の合格者平均は8割を超えています。
つまり合格を目指すお子様にとって落として良い大問は2-3個まで、となっていることがわかります。
2019年を除くと、平均点は上昇傾向にあることから、1日目は明確に易化の傾向にあるのではないかと推察いたします。その理由は結局のところ、難しくなればなるほど、合格者と受験者の差は11点程度と縮まり(2019年)、簡単になればなるほど、合格者と受験者の差が18点程度まで広がる(2021年)ことにあるのではないか、と推測することができます。
【算数2】
| 合格者平均 | 受験者平均 |
---|
平均 | 64.8(65%) | 51.4(51%) |
2021 | 67.8 | 54.3 |
2020 | 71.2 | 55.4 |
2019 | 56.8 | 44.5 |
2018 | 69.2 | 54.8 |
2017 | 62.4 | 48.4 |
2016 | 61.2 | 50.8 |
2日目の算数は例年通りの難問も入っていたため、受験者・合格者平均に例年との大きな違いは見られません。
この6年で見ても多少のブレはあるものの一定して65%程度を推移していることが伺えます。
1-4: 灘中学の科目別配点と試験時間
| 点数 |
---|
国語1 | 80点 |
国語2 | 120点 |
算数1 | 100点 |
算数2 | 100点 |
理科 | 100点 |
国語200・算数200・理科100と、類を見ないほど国算に比重が重く置かれた試験となっています。
1-5: 灘中学の算数の合格への寄与度
| 合格者ー受験者 | 算数の合格寄与度 |
---|
| 3科目 | 算数 |
---|
平均 | 40.2 | 23.7 | 59% |
2021 | 51.8 | 31.4 | 60.6% |
2020 | 50.3 | 32.4 | 64.4% |
2019 | 42.0 | 23.6 | 56.2% |
2018 | 48.7 | 28.3 | 58.1% |
2017 | 46.0 | 28.0 | 60.9% |
2016 | 42.5 | 22.4 | 52.7% |
合格寄与度とは、合格者平均と受験者平均の差が、どの科目の平均点の差から生まれたのか、という割合を示すものとなっています。灘中はそもそも配点の40%が算数ではありますが、その上で、平均すると60%の差が算数から生まれていることが伺えます。これは日本の3-4科目試験を行なっている学校の中でも一番と言って良いほど算数で合格が決まっている学校であると言えるでしょう。
また前述いたしましたように、算数が難化した年である2016年や2019年はその比重が52-56%に下がっています。
もちろん他科目による影響はありますが、概ね昨年度や今年のように算数が簡単になればなるほど合否へ与える影響は大きくなる、と考えて良いでしょう。
2: 2021年(1日目)灘中学入学試験の算数
2-0: 算数問題・解答PDF
問題PDF
解答PDF
2-1: 所感
2021年、灘中の1日目です。
全体感としては、2020年に続いて更に易化した印象で高得点勝負、逆に言うとミスをしない正確さの戦いになったのではないかと判断します。
易化した2020年が受験者平均と合格者平均の算数の乖離がこの10年で最大つまり算数で勝負がついた年になった為、その傾向を踏襲して更に一歩易化して試してみたのではないかと想像しますが、来年度以降揺り戻しが起こるかどうかについて確定的なことは言えません。
とは言え、それでも算数の力の有無は、近年の特徴と言える「数の性質」の分野を中心に一定出たのではないかと想像します。
以下、レベルBの問題に対してコメントしておきます。
◾️5番:あまりの世界、公倍数±
まず15という数字に対して反応して、公倍数±を逆に使って、15そのもので攻めるのではなく、3の倍数+1と5の倍数+1に分けた上で、5の系統で1の位を固めたあと、3で決着させに行くという流れで解きました。それぞれあまりの世界で、AのあまりとA×Aのあまりを決めに行くところもハードルになったかと思いますが、超えて欲しい問題ではありました。
◾️6番②:約数の積
約数がらみの難問を継続的に出題してきましたが、今回は積を扱ってきました。約数の積についてはそれほど出会う機会がないものの、関東圏の最難関校で何回か出題があり、使いこなせている人にとっては、比較的シンプルに解ける問題でした。勿論、約数の積を知らなくても、①の誘導の後、2日目の問題を解くかのように、自分で近い数で実験して味わう→規則の発見という流れ、でも問題なくクリアできただろうと思いますし、正解が近い場所にありますので実験中に答えに出会ってしまった人も多かったのではないかと想像します。
◾️7番:範囲と大小関係で絞る、試行検証、あまりの世界
どこから切り込んで行くかの際に、不等号の条件が強く働くので、先頭の最大・最小を決めに行く姿勢さえ持つことができればクリアできただろうと思います。最後は、解説ではあまりの世界を活用して7の倍数判定を工夫していますが、こちらも6番②と同じく見つけやすい場所に答えが置かれていたかと思います。
◾️11番:側面積全体:水面積の比が一定
発想を問いかける面白い問題でした。どこを底面にしても水:空気の高さは同じ、つまり割合が同じになることから、側面全体の面積:水に触れていない部分の面積:水に触れている部分の面積が一定になるということを活用した問題でした。
2-2: 難易度分析
2-3: 算数解説動画
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
10番
11番
12番
3: 2021年(2日目)灘中学入学試験の算数
3-0: 算数問題・解答PDF
※問題文に訂正がございます。以下が訂正箇所になります。
~~~
2枚目の大問4番(1)に以下の文を追加する。
「右の図の6つの並びは、どの2つも異なります。」
問題PDF
解答PDF
解答PDFにつきましては、1月17日14時半に公開しております。
3-1: 所感
2021年、灘中の2日目です。
全体感としては例年通りの難問が複数入った構成になりましたが、それでも大問1、大問3、大問5は非常に解きやすくここだけで5-6割近く加点できるので、合否としてはまずここを取りこぼしなく抑えきることが非常に重要になったかと思います。
その上で規則性(自己増殖型=フラクタル)の2番、前の結果利用をさせた上で再度解像度を上げにきた問題で構成された4番は難しかっただろうと思いますので、2番であれば(1)か(2)までと、4番であれば(3)か(4)まで解くことができればその他を完答すればおおよそ合格者平均を超えるところまで達したのだろうと推測します。
また大問の多くに、前の小問を次の小問や次の次の小問に使って行くという「誘導」が多くの問題で仕掛けられていることも特徴だったと言えます。
以下、レベルB以上の問題に対してコメントしておきます。
◾️2番(2)(3):(1)の利用・8×8セットで考える、(2)の利用・16×16セットで考える
まず小問の並びを見た段階で、例題で4×4、続いて、8×8、16×16、32×32と順に一辺が2倍ずつ増えて行くことから、前の問題を使って行くことだと判断します。
そして、ちょうど2倍ずつ増えていることを頭に入れた上で(1)に着手して4×4のシート4セットに区切りことができれば、あとは同じことを繰り返して行くだけではありました。
勿論、実際は本当に同じことが発生するのかの検証まで入れた上で進めるものの、最初の小問に取り組む段階か、取り組んでいる段階でほぼ最後の小問まで貫くことができるのかが決まったのだろうと思います。
◾️3番(3):(1)(2)の利用、全体から引く、隣辺比
レベルAに近しいレベルBです。2021年は1日目2日目通じて、平面図形の分野は他校でも出題されるフレンドリーなレベルの問題でした。こちらも(2)を出させていることから、逆を引く発想を持つことさえできれば仕留められただろうと思います。
◾️4番(3)(4)(5):前の結果利用の表、組合せを考えて注意して並べる、ABは向きが変わらずCDは向きが変わる
(2)(3)の並びを見て、各場所から各場所への→が決まる為、前の結果利用の表(時間のイチイチでも良いでしょう)を選択して、(3)までクリア。
ただここで、(4)で「何を使ったかを問いかける」為、解法に変化が必要。(4)は123からAとBだけで進める数を円周上に書いてあげれば、あとは途中に戻ることなく並べることでクリアできます。
最後の(5)は(4)を求めさせていることから、余事象と推測。
その上で、(4)(5)と一貫してABと、CDを分けている為、そこに仕掛けがあるのではないかと考えることができれば気づくことができたかもしれません。ただし全体の中では見送っても仕方ない問題だったかとも思います。
◾️5番(2)(ウ):小立方体の切断個数と形、(イ)の利用
段ごとに調べて行くのですが、既に一定の作図はしていることと、(イ)で2cm以下が出ていますので、あとはお決まりのように操作をして行くだけの問題です。ここは合わせて欲しい問題でした。
3-2: 難易度分析
3-3: 算数解説動画
大問1番
大問2番
大問3番
大問4番
大問5番
4: 灘中学志望者向けの対策・動画配信サービス
最後にお知らせとなります。
中学受験コベツバでは、上記の分析・出題傾向を踏まえて灘中学志望の子供たちを対象に、以下のサービスを配信をしております。
●1:サピックステキスト解説・SS解説・テスト解説の『StandBy(スタンバイ) for SAPIX』
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以上です。
来年度以降の志望の方にとって、少しでも今後の算数の学習のご参考になれば幸いです。
中学受験コベツバは、灘中学を志望されている小学生とその保護者様をエンパワーし続けられる存在になるべく引き続き頑張って参ります。