豊島岡女子学園中入試の解体新書 | 過去問データに基づく算数傾向分析と対策

豊島岡女子学園中学の解体新書とは?

豊島岡中学算数の直近10年間の入試を解体・徹底分析し、一般の方からは非常に見えづらい入試および入試問題の特徴を明らかにすることを通じて、世間一般で言われている常識とは異なる考察をお伝えし、入試突破にあたっての体系的な指針を提供することを目的としております。

入試対策において「全ての科目、全ての分野、全てのレベルの全てのポイントを対策すること」は時間と能力に余裕があればそれがベストです、でもそれはあくまでも理想論です。

現実は、時間との戦い・屈強なライバルたちの戦いであり、その為には、時間対効果が高いと考えられる勉強を入試突破に向けて戦略的に行う必要があります。

改めて丁寧に分析して判明したことは、「基本問題が中心でスピードと正確性重視」と一般的に思われている豊島岡ですが、正確さ勝負だけでなく立体図形や論理推理においては応用技術が必要とされ、出題者側の「もっと難しい問題を出題できる」余地を感じる、と言うことです。

桜蔭とはまた異なる特徴を持つ豊島岡ですが、まだ志望校対策に腰を据えて取り組む前段階である5年生や、追加の学習の余裕がない6年生前半でも、志望校を意識し、頻出単元の応用技術には積極的に手を伸ばしていくことで、6年生後半の志望校別特訓クラスのスタート時点でライバルと数段の差をつけることもできるでしょう。豊島岡中突破の頂に向けて最短・最速で登って頂く為に、是非ご活用頂ければ幸いです。

尚、音声コンテンツ「コベツバradio」では今回の記事の内容をより詳しく、わかりやすくお話ししております。保護者様からよくいただく質問についても回答しておりますので、志望者の方は合わせてご参照くださいませ。

以下の動画では、学校名が「としまおか」と聞き取れる部分もございますが、「としまがおか」が正式名称となっております。誠に申し訳ございません。

豊島岡女子学園中の最新入試の算数解説動画、難易度・傾向分析などは以下からご覧いただけます。

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2024年入試の基本データ

豊島岡女子学園中学偏差値(サピックス/四谷大塚/日能研)

第1回

 サピックス四谷大塚日能研
2024
2023617067
2022617067
2021617066
2020607067

第2回

 サピックス四谷大塚日能研
2024
2023637169
2022627068
2021627068
2020627068

第3回

 サピックス四谷大塚日能研
2024
2023637169
2022627068
2021627068
2020627068

豊島岡は近年10年で人気が高まり、偏差値を上げてきた学校です。第1回〜第3回の入試を行う珍しい学校ですが、3回の偏差値はほぼ変わりません。第2回・第3回は桜蔭と並ぶ偏差値になりました。桜蔭や女子学院の押さえとして受験されるイメージは既に過去のものになりつつあり、女子最難関の1つとして第一志望者の人気も高まっています。

豊島岡女子学園中学の受験者・合格者数・受験倍率推移

第1回

 受験者合格者倍率
2025
20249043892.3
20239644042.4
20229994142.4
202110064102.5
20209864022.5
201910003932.5
201810183962.6
20179993972.5

第1回(2月2日)の受験者は1000人程度で推移しています。

第2回

 受験者合格者倍率
2025
2024456686.7
2023509648.0
2022513529.9
2021514717.2
2020529737.2
2019520737.1
2018496677.4

第3回

 受験者合格者倍率
2025
2024467746.3
2023518717.3
20225575410.3
2021558757.4
2020552678.2
2019495746.7
2018527717.4

第2回・第3回はそこまでの合格者が抜け、一部他で押さえをとった上で、受験されている方も合流しています。受験日当日の夜に合否が発表され、不合格であった場合は翌日の試験会場に向かうという過酷な戦いでありますが、その分、第2回・第3回になるにつれ、精神力を維持できたお子様が合格されているのではないか、と推測されます(学校側の意図としても一発のまぐれではなく、頭脳・精神を合わせて優秀なお子様を採用したいと考えているのではないでしょうか)。また、豊島岡は毎年、補欠合格が40名ほど出ており、実際の合格者としては第1〜3回通して20〜25名いらっしゃいます。より多く受験したお子様が優遇される補欠合格となっています。

豊島岡女子学園中学の合格最低点・合格者平均点・受験者平均点

第1回【4科目】

 合格最低点合格者平均点受験者平均
平均201.3 (67%)219.04 (73%)191.03 (64%)
2025
2024194213.44186.45
2023209227.75199.96
2022200216.56191.36
2021201218.86190.62
2020207223.36195.61
2019205219.49193.57
2018207225.8196.7
2017187205.2175.3
2016202220.9189.7

合格最低点は7割弱であることから、ミスがあまり許されない高い水準の戦いになっています。

第1回【算数】

 合格者平均受験者平均
平均70.60 (71%)58.72 (59%)
2025
202454.7043.41
202373.0562.12
202270.0359.01
202172.3260.19
202068.9556.52
201966.6057.60
201874.7561.27
201775.9064.50
201679.0663.86

4科目でみると例年ほぼ通常通りの豊島岡ですが、算数をみると2019年~2022年は、平年より低い受験者平均点となりました。

2016年〜2018年の算数は比較的易しかったのですが2015年・2019年・2020年は難しくなっており、2年連続少し難易度の高い技術が出題されていました。2021年以降は平均点が回復しましたがそれでもトレンドとしては難化と捉えて良いでしょう。

第2回【4科目】

 合格最低点合格者平均点受験者平均
平均214.3 (71%)224.99 (75%)185.83 (62%)
2025
2024211223.24186.61
2023211222.97181.59
2022217227.37189.28
2021217227.00187.75
2020226235.56191.99
2019199210.40171.79
2018219228.4191.8

第2回、後述する第3回は、平均すると第1回よりもやや易化していることから平均点や合格最低点がわずかに上昇しています。

第2回【算数】

 合格者平均受験者平均
平均74.95 (75%)58.02 (58%)
2025
202470.9052.36
202373.8656.80
202277.9460.38
202166.1551.49
202083.4964.34
201968.9552.80
201883.3767.94

算数においても同じくやや易化しており(2021を除く)、合格者平均に迫るには約8割弱という高得点を叩き出す必要があることが窺えます。

第3回【4科目】

 合格最低点合格者平均点受験者平均
平均214.9 (72%)223.97 (75%)186.1 (62%)
2025
2024218227.89193.46
2023216223.96190.03
2022216224.24182.83
2021213221.80184.78
2020209219.40179.69
2019214223.22187.89
2018218227.30184.00

第3回【算数】

 合格者平均受験者平均
平均72.32 (73%)55.55 (56%)
2025
202476.1861.07
202360.9244.49
202279.4861.69
202166.1747.09
202075.2159.55
201973.5757.85
201881.7257.12

豊島岡女子学園中学の科目別配点と試験時間

 点数制限時間
国語100点50分
算数100点50分
理科・社会各50点50分

女子最難関の中では、国算への傾斜が最も強くかかっている学校となっております。

豊島岡女子学園中学の算数の合格への寄与度

第1回

 合格者ー受験者算数の合格寄与度
 4科目算数
平均28.0111.8842.4%
2025
202426.9911.2941.8%
202327.7910.9339.3%
202225.2011.0243.7%
202128.2412.1343.0%
202027.7512.4344.8%
201925.929.0034.7%
201829.1013.4846.3%
201729.9011.4038.1%
201631.2015.2048.7%

そもそも豊島岡の合格者と受験者の平均の差は約30点(300点満点中)となっており、受験者と合格者の差が少ない学校です。算数の配点が300点中100点と女子校の中では高い水準になっていますが、合格者と受験者の差30点のうち、算数でついた差は、約9点〜15点となっており、合格寄与度はおおよそ40〜45%となっております。

なお、進学後も数学の授業に力を入れた教育に特徴があることから、受験生にとってちょうど良い、合否を分けるような問題を出すことができており、その結果合格寄与度が高くなっているのだと推測されます。

第2回

 合格者ー受験者算数の合格寄与度
 4科目算数
平均39.1616.9443.3%
2025
202436.6318.5450.6%
202341.3817.0641.2%
202238.0917.5646.1%
202139.2514.6637.4%
202043.5719.1544.0%
201938.6116.1541.8%
201836.6015.4342.2%

第3回

 合格者ー受験者算数の合格寄与度
 4科目算数
平均37.8817.7746.9%
2025
202434.4315.1143.9%
202333.9316.4348.4%
202241.4117.7943.0%
202137.0219.0851.5%
202039.7115.6639.4%
201935.3315.7244.5%
201843.3024.6056.8%

豊島岡女子学園中学の傾向と対策

豊島岡の算数 出題レベルと戦略

過去の豊島岡入試(10回分)の出題レベルの統計が以下のようになっております。

尚、レベルAは受験者の多くが正解させられる問題、レベルBは合否を分けるような合格者のみが得点できる問題、レベルCは合格者でも得点できない問題です。

レベルAはほぼ完答。レベルBは3分の1程度合わせることで合格最低点を少し上回ることができ、ここのラインが受験生が目指すラインになるでしょう。

レベルAが60%と言うことで決して難しい問題が多いわけではありません。しかしながら、受験者平均と合格者平均が非常に近いことから、1問・2問で合格不合格が決まっており、それはレベルA1問のミスであったり、レベルBを後1問解けるかどうかと言うとことにかかっているでしょう。

レベルAを隙無く固めるために、分野を網羅的に応用的なものまで固めておきましょう。

次に、ではレベルAを固めた上で、それで合格できるのかと言うとそう言うわけではありません。

豊島岡は問題数に対して制限時間が厳しいため、合格者でも本当にレベルAが必ず完答できるわけではなく、1問は間違える可能性はあるため、やはりレベルBの問題でもしっかり狙っていく姿勢が必要です。

しかしながらレベルBの問題がそこまで多いわけではなく、また、小問集合の中でレベルBが出てくるため、様々な分野のレベルBが出題される可能性があります。もちろんよく出題される分野はあるのですが、それ以外の応用技術もしっかり抑えておく姿勢を持っておいて欲しいです。

豊島岡の算数の頻出分野(レベル別)

次に分野別に出題傾向を捉えていきましょう。

先ほどと同じく10本分の過去問から集計した出題割合です。

女子最難関の桜蔭のデータと重ねて捉えてみましょう。青が豊島岡、赤が桜蔭です。

「速さ」「立体図形」と言った出題分野に被りがあり、分野としては共通していると言えるでしょう。(ただし傾向は異なります)

一方、桜蔭では「平面図形」「文章題」がほとんど出題されないのに対して、豊島岡では相応に出題されています。

より詳しく、レベル別にみていきましょう。

まずはレベルAから。

文章題・平面図形などを中心に出題されていますが、幅広い単元が出題されています。

速さに関しては、これまではレベルAのものが中心でしたが、難易度を上げてきている印象ですので、今後はレベルB(合否を分ける問題)の頻出分野となっていく可能性もあるでしょう。速さの難化傾向は女子御三家に共通したトレンドと言えるでしょう。

また、平面図形や文章題は桜蔭ではほとんど出題されない問題ですから、桜蔭併願者は対策が疎かにならないように注意しておきましょう。

次にレベルBです。

レベルAは塾の授業にしっかりついていくことで得点できる学校なのですが、合否を分けるのはこのレベルBです。

立体図形・論理推理だけでレベルBの3分の1を占めており、この2分野はほぼ毎年出題されています。この2分野の徹底対策は豊島岡志望者に必須と言えるでしょう。

最後はレベルCです。

立体図形がレベルCのほとんどを占めています。逆にレベルB頻出であった論理推理がほとんどレベルCにありません。つまり、立体図形には「解き易い〜絶対解けない問題」まで様々なレベルがありますが、論理推理は「全く手も足も出ない」可能性が低いと考えられます。

ここまでの傾向をまとめると、レベルAは各塾のテキストを応用的な問題まで含めて抑えておくことが重要です。苦手な分野をできるだけ作らないことで、痛い失点を防ぎましょう。

コベツバでは中学受験算数の標準的な技術を網羅的に体系的に学習できるコベツバweb授業を配信しています。5年生・6年生で単元ごとの学習で抜け漏れを防ぎたい方にお勧めです。

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さて、その上でレベルBが数問取れるかどうかで合否が決まりますし、それは「立体図形」と「論理推理」を鍛えることが最も近道です。

豊島岡の合否を決める「立体図形」対策

圧倒的に「切断系(または求積)」の立体図形が出題されます。(逆に桜蔭や女子学院が好む展開図系の立体図形はほぼ出題されません)

必要となる技術は一定高度かつレアであるものの、「技術を知ってさえいれば得点できる」問題が多く、豊島岡ボーダーラインに並ぶお子様であれば解けるだろう問題が出題されています。

ただし技術を知らなければ、全く手も出ない可能性があるため、何よりも幅広く立体図形を抑えること」が重要です。

とはいえ、豊島岡は過去出題されたものと似た味わいの問題はあまり出題しません。そのため、過去問をやり込みさえすれば必ず解けるようになるわけではなく、他校の過去問や塾のテキスト、または後述するコベツバweb授業等で幅広く技術を押さえていく必要があるでしょう。

傾向が似ている他校の過去問は、男子校ではあるものの「海城」「甲陽学院」となります。

「桜蔭や渋幕でも切断系の問題は出題されるのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、桜蔭の立体図形は「展開図系も出題されること」から豊島岡の立体図形対策としては費用対効果が高くはありません。また桜蔭の入試問題の何よりの壁は「答えまでがひたすら遠く、計算や整理が煩雑であること」です。豊島岡とはずいぶん味わいが異なるため、豊島岡のために桜蔭の過去問に取り組むことは効果がないわけではないものの、直結するとは言い難いです。

次に渋幕ですが、渋幕の立体図形は灘をベンチマークとしており、豊島岡よりさらに高度な技術が出題され、立体図形好きの男子に求めるような切れ味のある問題が多いです。豊島岡志望の女子にとってはかなり高い壁に感じられるかと思います。

ちょうど良い練習としては、コベツバweb授業の「立体図形」(豊島頻出の立体切断特集もございます)や、過去問であれば類似している「海城」「甲陽学院」がおすすめです。豊島岡合格を確実にされる場合は是非取り組んでおいて欲しいと思います。(コベツバ過去問動画解説にて解説動画を配信しています。)

豊島岡の合否を決める「論理推理」対策

豊島岡の論理推理は、いわゆる思考力問題で、問題を読み込んだ上でルールを把握して一手ずつすすむことを求められます。

思考力系といえば、地頭、攻略が難しいというイメージがあるかもしれません。確かに女子学院や麻布も同じく思考力が頻出の学校で「数パズル系」を好む傾向にあり、こちらは一定の発想が必要になります。しかし、豊島岡の「問題を読み込んだ上でルールを把握して一手ずつすすむタイプ」は「読解・整理・誘導・試行検証」が盛り込まれている問題です。

その中でも豊島岡はしっかりと1歩1歩進めることができれば解ける問題であり、とはいえ、簡単すぎるほどではなく、一定の複雑性があり、受験生にとって少し手強いと感じる問題です。

麻布や栄光の論理推理は、一握りの算数男子だけが試験内で解けるような難問が出題されることがあるのですが、決してそんなことはなく、繰り返しになりますが「しっかり取り組めば解ける問題」なのです。

出題者の意図としては、「思考力にアタックするハートのある受験生」であれば、「手が届く思考力」を出題することによって、「思考力は私には無理」と頭から思っている受験生をフィルターにかけることなのではないかと思います。

これまでに出会った思考力は苦手だったお子様も、豊島岡の過去問を通じて思考力アレルギーを緩和していくことができると思いますし、それができるお子様をまさに合格させたいと言う意図を感じます。過去問に取り組む前の4年生〜6年生や、過去問だけでは練習量が足りないお子様は、コベツバweb授業の思考力テスト講座がおすすめです。

慣れてしまえば、立体図形よりも得点源にできる可能性のある分野ですから、志望者の方は思考力を捨てることなく進んで欲しいと思います。

思考力の伸ばし方については、以下を参考にしていただけますと幸いです。

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中学受験コベツバでは、上記の分析・出題傾向を踏まえて、豊島岡女子学園中学志望の子供たちを対象に、以下のサービスを配信をしております。毎年、多数の豊島岡女子学園志望者が算数強化を目的にコベツバを活用して、豊島岡女子学園中に合格しています。

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