この記事では、中学受験算数で大切になる「思考力」とは何か? 近年のトレンドと学校別の思考力のパターン、そしてその伸ばし方についてお話しいたします。
時に、思考力は「地頭」とほぼ同一のものとして語られます。
「思考力を伸ばす」と言ってもいったいそれはどのような能力で、どうやったら伸びるのか、漠然としかわからないという保護者様も多いのではないかと思います。
しかし、算数における思考力は適切な訓練と経験によって明確に伸ばすことができます。
また、それは算数以外の領域でも汎用性・展開性のある能力であり、だからこそ近年、全国の最難関・難関校の入試で重視されるようになっています。
このような「算数の思考力」について徹底的に分解して、わかりやすくお伝えできれば、と思います。
1: 算数における思考力とは?
技術のみで解けない問題を解く力です。
地頭、素養とは別の力で、手持ちのもので問題を解決する力と言えます。
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2: 思考力が求められる学校と特色は?
サピックスオープンAタイプが技術系、サピックスオープンBタイプが思考力系と言われていますが、最難関、難関を目指すのであれば、技術系と言われる学校であっても、思考力は求められています。
コベツバで速報をおこなってる主要学校について、思考力が求められる小問の割合を算出いたしました。
【保存/ブクマ推奨】技術系難易度×思考力グラフ
— 村中毎悟克(むらなか まさかつ)/中学受験コベツバ (@m44Vhsr2TM8gtAq) April 22, 2024
コベツバで入試速報を行っている約60校の2022年から2024年の3年間の入試問題を分析して数値化したもの。
技術系難易度=技術系難易度指数
思考力=思考力(※)問題の比重… pic.twitter.com/kx1Xr4WDGT
上記で15%を超える学校は必ず思考力まで対策した方が良い最難関・難関の学校群です。10%を超える場合も可能であれば対策できると強いでしょう。
思考力対策まで取り組んだ方が良い学校
◯関東:
筑駒/男子御三家/聖光/栄光/渋幕/豊島/渋渋/早大学院/早実/駒東/筑附/市川/
東邦大東邦/フェリス/浦和明けの星/浅野/(海城)
◯関西:灘/甲陽学院/東大寺/西大和
◯地方:久留米附設/ラサール鹿児島 /東海/
→ コベツバweb授業の思考力テストが対策としておすすめです!
「え、この学校も?」と思われる学校も含まれているかもしれません。近年は思考力も大問1つ以上出題されるケースが多く、全体の受験生のバランスを鑑みた際に、部分的にでも得点した方が良いケースが増えています。もちろん対策しなければ合格しないわけではなく、6年後期になっても本当に思考力が苦手な場合、他分野・科目との兼ね合いで対策をしない方向に舵を切ることもありますが、6年前期までの段階で完全に捨てることは危険性が高いでしょう。
なお、上記の中で思考力がダントツに求められているのは栄光で、同様に語られることの多い麻布と比較すると、麻布は栄光に比べれば思考力系の問題は半分ぐらい少ないと言えるでしょう。※その栄光でも技術系の難問は出題されています。
開成は問題の傾向が年度ごとに揺れていますが、2020年の問題のように思考力が必要とされる問題が多く出る年もございますので、対策しておくことは必要です。
女子学院は簡単な技術問題で高得点を狙うイメージが強いかもしれませんが、案外、試して検証する思考力が必要とされています。
2010年代以降の最難関校では、最低でも大問1つは思考力系の問題を出題する学校が多くなっています。よって、最難関、難関を目指すのであれば、思考力を鍛えることは大切です。
関東以外の学校についても「5:思考力の種類と近年のトレンド」で詳しくどのような筋肉が求められているのかを記載いたします。
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3: 思考力が鍛えられる塾・テストは?
思考力ばかりを鍛えさせている塾は少ないです。
その理由の1つは、思考力はすぐに発達する能力ではないことに対して、技術は適切に教えれば発達が早い事、
次に、思考力がなくても技術を固めてなんとか合格できる学校は多くあるものの、その逆、技術ではなく思考力単体で合格できる学校はほとんどないからです。
▼ 思考力を図る場合
5年生〜6年前期のサピックスオープンのBは思考力問題なので、思考力単体の力を測る上では最適なテストと言えます。なお、四谷大塚のテストでは、思考力単体を測る目的のテストはありません。模試に時々含まれています。
志望校をベンチマークした模試だと思考力・技術力が必要とされる問題がミックスされているので思考力単体で力を測ることは難しくなっております。コベツバの模試速報の分類に記載があるので、気になる方はみてみましょう。
▼日々の教材での思考力を鍛えられるの?
サピックスの日々の教材では、4〜5年生の間は「頭脳トレーニング」「思考力アップ」などのコーナーで思考力問題が出題されます。6年生の平常教材・土特教材では出題はほとんどありません。
四谷大塚の教材「予習シリーズ」は技術の習得に特化した教材で、思考力単体を求める問題の出題はほとんどありません。ただし、最難関問題集などには、思考力と技術の双方が求められる問題の出題が時々あります。
低学年用の教材で思考力を鍛える本はいろいろとあります。ただし入試段階で求められるものはより複雑であったり、文章が長かったり、答えまでが遠かったり、など低学年用との違いは様々あります。
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4: 思考力の伸ばし方は?
思考力問題の量をこなしていくのみです。算数のテキストは技術ベースで作成されており、そのような問題は数分でわからなければ解説を見て、技術を学ぶ、という解き方になります。
反面、思考力を鍛えるためには、技術習得モードから切り替えて、考える時間をきちんととって思考力問題を解く訓練が必要です。
自分で一定考えた後、綺麗な解法を真似て、思考力問題への取り組み方の「型」に慣れることによって初見問題(本番)でも使える力が育ってくるものです。
自己流の場合ですと、一定以上に思考力が伸びない傾向がございますので、型を真似て思考力を学ぶことが大事です。
型の4パターンについては次の項目でお話しいたします。
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5: 思考力の種類と近年のトレンド
問題ベースでは、
① 読解
② 整理
③ 試して検証(試行検証)
④ 誘導・解釈の4種類がございます。
それぞれ求められる学校は以下の通りです(もちろん、今後傾向が変化する可能性もあるので、狙いすぎた対策は危険です)
求められる思考力の種類:男子校
男子校① | 筑駒 | 開成 | 灘 | 麻布 | 聖光学院 | 栄光 |
---|---|---|---|---|---|---|
出来ると信じられるハート | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
読解力 | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ | |
整理能力 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
誘導に乗る、解釈する力 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | |
試行検証の力 | ◎ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ |
男子校② | 武蔵 | 駒東 | 東海 | ラ・サール | 甲陽学園 |
---|---|---|---|---|---|
出来ると信じられるハート | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
読解力 | 〇 | ||||
整理能力 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
誘導に乗る、解釈する力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
試行検証の力 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
求められる思考力の種類:女子校/共学
女子校/共学① | 桜蔭 | 渋幕 | 渋渋 | 早実 | 女子学院 | 豊島岡 |
---|---|---|---|---|---|---|
出来ると信じられるハート | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
読解力 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
整理能力 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ||
誘導に乗る、解釈する力 | 〇 | 〇 | ||||
試行検証の力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 |
女子校/共学② | フェリス | 慶應SFC | 筑波大附属 | 久留米大附設 | 南山女子 |
---|---|---|---|---|---|
出来ると信じられるハート | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
読解力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
整理能力 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
誘導に乗る、解釈する力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
試行検証の力 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
それぞれの意味と難しさは以下の通りです。
A: 読解
非常に長い文章から状況やルール、言わんとしていることを読み取る力です。
文章が単に長いために、情報を抽出するのが大変と感じられ、問題に取り掛かる前にやる気を無くしてしまったりするお子様も多いです。(聖光学院、開成など)
B: 整理
与えられた情報を自分なりに、解に近づけるように整理する力です。算数の整理の方法の型を自分の中に入れていることが必要になります。
表などの情報整理パターンをストックしていることで問題が解きやすくなったり、整理だけで解けるようになったりします。(桜蔭など)
C: 試して検証
低学年から鍛えていることが多い思考力で、論理だけでは答えが決まらないので、実際に何パターンか試して、手を動かすことで答えを出す力です。場合の数、論理推理などで必要になることが多いです。(灘、開成、女子学院など)
D: 誘導に乗って解釈
例題や問題で与えられているものより深いものを解釈して、その上で問題を解く力です。(開成、灘、麻布など。近年のトレンド)
上記の4要素に加えて、思考力には土台となるマインドが必要です。
それは「解けるかもしれない!だから、立ち向かってみよう」と信じることができるハートやマインドです。
どのような問題にも言えることではありますが、特に思考力問題はその場で脳をフル回転して答えを見つける作業になるので、知っていることを当てはめる技術系と異なり、マインドに左右されやすいです。
このような精神力は過去の成功経験が元になりますので、本番で思考力を試される問題に怯まないよう、普段から鍛えて成功経験を積み重ねておくことが大切です。
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6: コベツバweb授業「思考力」のご紹介
「コベツバweb授業」内では、「思考力」講座を配信しております。
これまで「コベツバweb授業」では体系的に「技術」を身につけていただくことをコンセプトにオリジナルコンテンツを配信しておりましたが、「思考力」を身につけられる講座も配信して欲しいとのお声を受け、配信を決定いたしました。
技術を身につけていただくことが優先ですが、1回2問ずつ(最長20分のテストと間違えた場合のやり直し最長20分程度)良質な思考問題に取り組まれることで難関入試に必要とされる思考力を鍛えていただくことができます。
お子様目線の、答えありきでない思考プロセスを動画で追えること、近年の入試トレンドを押さえていることが弊講座の特徴になります。
形式 | テスト形式(ランキング発表・解説動画付き) |
---|---|
頻度・量 | 1回につき2問 |
テスト制限時間とやり直し時間 | 合計20~40分
1問10分を目安に2問取り組まれた後、解説動画のご視聴、間違い直しに20分程度 |
難易度 | 難関校・最難関校の過去問級 |
対象学年 | 3~6年
比較的余裕のある早い学年から取り組まれると、思考力が着実に身に付くため、3年生以上が対象となっております。 (先取りをされていらっしゃる場合は、1,2年生のお子様も参加いていただけます。) |
参加目安 | SAPIX算数偏差値55以上/四谷・日能研60以上
偏差値が上記の基準に達していない場合でも、取り組むことが出来る場合は、勿論参加していただいて構いません。 しかし、思考力だけで決着する学校は少なく、やはり前提として技術習得が重要になるため、技術習得に並行して取り組んでいただきたいと考えております。 |
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7: 質問コーナー
Q1: 思考力、技術のどちらが重要ですか?
どちらも最終的には備えていることが理想ですが、技術が武装されていれば合格できる学校はございます。一方、思考力だけで合格できる学校は少ないため、塾でも5~6年生にかけて技術を詰め込んでいるのが現状です。よって、技術の習得の方が優先ですが、最難関で必要とされる思考力を身につけるために、塾のカリキュラムで技術の習得に追われる前の3~4年生の段階から少しずつ思考力を鍛えておいて欲しいと思います。
Q2: 大学入試改革もあり、中学受験でも思考力が重視されるようになってきていますか?
思考力誘導タイプの問題が増えています。問題前半で与えられた規則に従って操作をして、後半でその規則を解釈して問題を解く問題が明確に増えてきています。
また、思考力単体の問題でないものの、技術を必要とする問題の中に、こういった規則の解釈など思考力も合わせて求められる問題が緩やかに増えています。
Q3:低学年から思考力問題に取り組む必要はありますか?
低学年から思考力問題に取り組まなくても、思考力の高いお子様もいらっしゃいますので、一概に必要、不要と申し上げることはできません。
しかし、5年、6年生前半では技術習得に追われてしまい、そのまま入試問題に取り組むカリキュラムが多いため、3、4年生の間に思考力を鍛えておくことは有用であるとコベツバでは考えています。
Q4:低学年向けの思考力教材(塾の補助教材等)との違いはなんですか?
低学年向けと入試直結の思考力系の教材の違いは明確にございます。
低学年向けの思考力問題では算数の基礎知識がなくても解ける問題が多いです。
一方、入試直結の思考力問題では、一定の算数の基礎知識・応用知識があった上での思考力をみる問題が多いです。 コベツバweb授業は主に、技術要素も要求される問題を極力除いて、選定・出題(図のAの部分)しています。
もちろん、技術部分を除いているとはいえ、多少、小4前半で学習するレベルのもの(和差算など)を求められることはあり得ますが、受験算数における基礎中の基礎と言えるもの以外は、基本的には省いております。 知らなかった技術が出てきた時には、その都度分野別教材で技術を学習していただけると幸いです。
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