「週テスト」と「カリキュラムテスト」は、四谷大塚が開催する2種類の確認テストで、「週テスト」は毎週1回、直営校や一部の準拠塾で実施されるもの、「カリキュラムテスト」は2週間に1回、早稲田アカデミーを筆頭とする提携塾で実施されるテストです。
算数はコース別(S・C・B・A)のテストとなっており、平均点や偏差値、全国の順位が発表されています。
この記事では四谷大塚生、早稲田アカデミー生、英進館生など、全国の予習シリーズ生が利用する「週テスト」「カリキュラムテスト」の算数について、その目的、特徴や出典、難易度、そして対策方法をお話します。
また、今回お話します内容を、以下のラジオでもご紹介しておりますので、よろしければご視聴ください。
0: はじめに「始まりとしての週単位学習と『桶狭間の戦い』」
1:59から再生
長い家庭教師時代の指導を振り返って、志望校に特化した山に登って行く6年生の夏休み以降を別世界とすると、それ以外の他の期間で家庭教師として学習の協力者・伴走者として入っていく場合、学習上の最初の打ち手はほとんどの場合、「週単位学習」の強化から始めます。
多くの集団塾が一週間単位でのカリキュラムを組んでいる事情もあり、子どもたちは一週間単位で新しい技術や論点を習い、それを使いこなして行くことが求められます。そして、「余分なこと」を学習する集団塾は2020年代の今ほとんど存在しない以上、週単位学習で習得できなかった技術は「穴」として残り続けることになります。
従って、週単位での学習の網羅性・定着性が鍵を握ることは明らかで、まずは週単位での穴を作らないことから開始します。
勿論、(家庭教師として)入る前段階でできていた「穴」や、忘却でできてしまった「穴」を埋めることは必要ですが、まだ当面は続いて行く週間単位での学習の「穴」を作らないことが何よりも大切になります。
また、塾に通っている期間ではなく、それぞれの子どもたちが本気で学習する期間を約1-3年間と考えると、そこ(週単位の学習)でアクセルを踏んでもらえるか、伴走者としては踏ませられるかが最も大切です。
受験はさながらマラソンレースのようで、中盤の調整や最後の坂の登り方は確かに重要ですが、序盤の走り方の調整を行うだけでそのまま志望校に上位でゴールテープを切ることも多く存在することを伝えておきます。
うまくいった生徒を振り返っても、最初の戦いは「週単位学習」です。
四谷大塚の週テストや早稲田アカデミーのカリキュラムテストで点数が取れなくて足を引っ張っていた子どもが、やり方を変えてテストを受ける。
そこで明確に得点が向上したという実感を持って、成功体験としてこれまでのやり方と変えた週単位の学習のやり方を自分の型にする。
嬉しそうに努力できるようになって毎週の学習を繰り返していく。
自分の成長に対して希望や期待を持ちながら、学習を進めている状況を作る。そこまでが伴走者として最初に始まる重要な戦いだと今も昔も変わらず思っています。
これまでのやり方を変えること、あるいはやる量を増やすことに対して、大人であろうが子どもであろうが、人間は基本的には抵抗から入ります。
その抵抗を破れるのは最初の「期待」や「希望」です。
この家庭教師の先生なら、あるいはコベツバなら、自分をより高いところまで連れていってくれるのではないかという「期待」や「希望」です。
そして、それが習慣として継続できるのは「実感としての成果」、つまり最初に現れるのは週テストの結果です。
努力の甲斐があったという最初の一歩を創り出し、それを毎週続けて行ける状態を作るまでを「桶狭間の戦い」と呼んでおり、入試までの全体プロセスを俯瞰して見ても、受験学年よりも前段階でいきなり訪れるものの、相当に重要度が高いものだと考えております。
以下では、週間単位での学習方法について述べます。参考にして頂くことで、それぞれの「学びの桶狭間」を無事に切り抜けて行って頂ければ幸いです。
1: 週テスト・カリキュラムテストの目的
10:37から再生
「週テスト」「カリキュラムテスト」の内容は簡潔に言いますと、「先週と今週学習した技術・論点」を自由に使いこなすことができているかを問うものになっています。
従って、1週間あるいは2週間の学習で身につけるべきものの「穴」がないかどうかを測る目的で設計されています。勿論、週報などで偏差値や順位が出てくるため、子どもたちも頑張る動機に繋がりやすいことが特徴です。
逆に、ご家庭チームとしては、週間での学習における、「努力の量や質」が適切かどうかを測るための指標として活用することができます。
●「穴」を発見して、後々埋めなければいけないことを把握するためのセンサー
●「やり方」を変えた時に、結果としてすぐに反映されることで、「やり方」の学習効果を判断するもの
という役割を持っていますので、ご家庭チームとしては効率的な学習の為に週テスト・カリキュラムテストという機会を活かす、という認識で進めていくのが良いでしょう。
2: 週テスト・カリキュラムテストの分析
14:41から再生
2-1: 構成と平均点(週テスト)
大問 | 構成内容 |
---|---|
1番 | 四則演算 |
2番 | 前回のNOの小問集合 |
3番 | 今回のNOの小問集合 |
4番 | 前回のNOの大問 |
5〜7番※ | 今回のNOの大問 |
※5年は6番まで、6年は7番まで
四谷大塚の週テストの構成はほぼ完全に固定されていますので、特に出来なかった論点が今回のNOの部分なのか、前回のNOの部分なのかを明らかにして次に活かすことに繋げてほしいと思います。
特徴的なことは、今回のNOの論点や技術を完全に理解していても、60%までしか取れていないことです。
例えば、子どもたちが「生まれ変わるように決意して一週間頑張った」としても、前回部分に穴がある場合、極端に言いますと週テストでは75点しか取ることはできません。その場合も「今回の部分が出来ていたこと」自体を賞賛すべきなのだと思います。
<四谷大塚 週テストのおよその平均点>
学年・コース(S・C・B・A)によらず、おおよそ55-70点が平均になっております。
NOによってのブレはおおよそ上のレンジに収まる範囲が多いですが、難易度の高いNOであれば50-55点、簡単若くは仕上がったお子様が多く受験する6年中盤であれば70点以上という場合もあります。
2-2: カリキュラムテストの構成
大問 | 構成内容 |
---|---|
1番 | 四則演算 |
2番 | 前回・今回のNOの小問集合 |
3-7番 | 前回・今回のNOの大問 |
四則演算を除いた2週間分の小問集合と大問がほぼ均等に出題される構成で、週テスト2週間分を凝縮した形になっています。
2-3: 出題範囲とクラス帯による違い
テストの問題がどのテキストのどのレベルの問題をベースに作られているかを推論したものを記載します。
▼4年
A・Bクラスは、
予習シリーズと演習問題集の基本問題までを中心に出題される
C・Sクラスは、
予習シリーズ・演習問題集・最難関問題集を中心に出題される
Sクラスの方が応用・発展問題が1問多い
▼5年
A・Bクラスは、
予習シリーズと演習問題集の基本問題までを中心に出題される
C・Sクラスは、
予習シリーズ・演習問題集・応用演習問題集を中心に出題される。Sクラスの方が応用・発展問題が1問多い
▼6年
A・Bクラスは、
予習シリーズと実力完成問題集の基本問題までを中心に出題される
C・Sクラスは、
予習シリーズ・実力完成問題集・応用力完成問題集を中心に出題される。Sクラスの方が応用・発展問題が1問多い
尚、出題されている論点の傾向は、週テスト(四谷大塚)もカリキュラムテスト(早稲田アカデミー 他一部の準拠塾)も同じです。
クラス帯によって、出題されるテキストの範囲が大きく異なる特徴があり、A・Bクラスは「予習シリーズ」が中心で、次の問題集の基本までという構成で、C・Sクラスはすべての問題集で扱った論点が範囲に入っていることになります。
また、Cでは最後の1問、Sでは最後の2問が掲載論点を用いた応用・発展問題が出題され難易度が高くなっている構成です。結果として、学力上位帯でもテストの難易度が上がることから、平均点がほぼ一定になっています。
2-4: 特徴
他有名塾との明確な違いは、端的にいうと
学年・クラス帯によらずテキスト(予習シリーズと付属問題集)掲載の問題と数値を変えただけの全く同じ問題が出題されないこと
です。
ただし、テキストに掲載されている技術を使う制約条件の中で問題が設計されており、その上で最低でも数値だけではなく、文章を変えるところまでを意図して出題されていることが伺えます。
四谷大塚の下位クラスであっても数値替えだけの問題を出題しないことから、算数の初学者や算数が苦手な人には比較的厳しい構成になっています。あまりの得点の取れなさに、テスト自体に消極的になってしまう可能性もあるでしょう。
(もちろん、本来はそれでも得点できるよう訓練するプロセス自体が学力の伸びと正しい学習スタイルの形成につながり、とても大事ではあります)
反面で、数値替えのテストに慣れてしまい、解法を理解せずただ暗記しているだけで乗り切ろうとする人をあぶり出すことができる構成になっているとも言えます。もし、4〜5年生の算数を暗記だけで乗り切ってしまった場合、滑り出しは高得点でも徐々に成績が低下し、6年生の実力の世界では通用しなくなってしまいますが、こう言ったケースが四谷大塚のテストで訓練されてきた子供たちには少ないと言えるでしょう。
また、クラス帯ごとにテスト内容を細かく替えており上位帯の中でもテストで差がつく構成になっていることから、週テストの成績が組分けの成績と相関しやすいと推測されます。
3: 週テスト・カリキュラムテストに向けた対策と学習方法
25:28から再生
学習法の大まかな流れは、週テストもカリキュラムテストも難易度レベルは同様となり、学習法に大差はありません。
今週(1週間)の学習について説明した後、両テスト共に入っている「前週の復習」の学習法について説明いたします。
3-1: 毎週の学習(コベツバの解説動画を利用する)
以下の流れで新しく習うNOの学習を、一週間で行います。
▼1:授業前にポイントを見る(例題と類題があれば、解いておく)
→「流れ▼1での注意点」へ
▼2:授業を受ける
▼3:授業から目安48時間以内に、特定のポイントを使う問題ごとに、教材を横断し、まとめて連続して解く
→「流れ▼3での注意点」へ
▼4:3と同時に、1問ごとに問題に記号を打つ+やり直しをすぐに行う
→「流れ▼4での注意点」へ
▼5:次回週テストまでに◎以外の問題を再度やり直す
→「流れ▼5での注意点」へ
それぞれの流れについて、図解・補足させて頂きます。
▼1:授業前にポイントを見る(例題と類題を解いておく)
過去多くのコベツバユーザーの話を伺っていますと、先にポイント動画を見てから授業を受けると理解が早く学習全体の時間短縮に繋がるという声をよく頂いており、先に学習する論点を端的にまとめたものを見てから授業に臨むことを推奨します。
また、実際に例題・類題まで手を動かしている方がより授業自体の理解は進むでしょうが、授業後にやる場合と授業前にやる場合とを比べた時にどちらが効率的かはお子様・通っている塾の先生のスタイルによりますので、お子さまと相談して決定して頂くと良いでしょう。
▼3:授業から目安48時間以内に、特定のポイントを使う問題ごとに、教材を横断し、まとめて連続して解く
人間の脳は学習から時間が経過すればするほど忘却が進みます。48時間以内がホットなタイミングであり、そこまでに学習した内容を用いて宿題を終わらせてしまうのが効率的な学習方法と言えるでしょう。また、コベツバでは特定のポイントごとにまとめておりますので、同じ技術を使う問題を連続して解いていくことで、より体系的に学習することができます。
四谷大塚の教材は関東のサピックスや関西の浜学園と比べて演習寄りの作りになっておりますが、新出の技術を身につける段階においては「同じ技術を異なる問題、異なる角度で何問か経験する」ことでようやく身につけることができる子どもたちが多い為、コベツバでは上記のように同じ技術を使う問題をまとめて解いていく、ことをお勧めします。
▼4:3と同時に、1問ごとに問題に記号を打つ+やり直しをすぐに行う
また、答え合わせとやり直し、は必ず1問ごとに行っていくようにしましょう。何故なら、1問ごとに答え合わせ・やり直しをしない場合、同じ間違いを何度も繰り返してから一気に直すことになりますし、分からない問題が何問も続くことがある為です。
そして、動画を見て理解しただけで終わらずに「必ず動画を見ずに自分の手で解いてみる」ことが重要です。大多数のお子様において「動画を見てわかったとしても実際に手を動かすと解けない」と言うことがあり得ます。必ず「自分の手で解けるか」までを確かめておきましょう。
最後に、必ず問題と向き合った場合には、以下の記号を打つようにしましょう。
◎:「正解し、次の週テスト時点でも絶対に大丈夫と言い切れる問題」
◯:「正解し、次の週テストまでに一度見直しておかないと、忘れそうな問題」
△:「正解したものの、解き方に不安が残るor時間が(解説動画の所用時間以上)かかった問題」
×:「不正解or途中で諦めた問題」
▼5:次回週テスト/カリキュラムテストまでに◎以外の問題を再度やり直す
4の段階で打った記号のうち、◎以外の問題をすべてやり直して定着確認を行います。勿論、間違った問題は解説を見て、解き直すことまで行います。
3-2: 毎週の学習(コベツバの解説動画を利用しない)
▼1:授業前は例題と類題に取り組む
▼2:授業を受ける
▼3:授業から目安48時間以内に、特定のポイントを使う問題ごとに、教材を横断し、まとめて連続して解く。これはコベツバの「そのNOの扉記事」を参照する(21年4月時点無料公開)
▼4:3と同時に、1問ごとに問題に記号を打つ+やり直しをすぐに行う
▼5:次回週テストまでに◎以外の問題を再度やり直す
それぞれの項目の注意点はコベツバを利用する場合と大きく変わりませんので、ご参照ください。
ただし▼3の「特定のポイントを使う問題をまとめて解く」と言うことですが、これは以下のコーナーに掲載されております、コベツバの「そのNO扉記事」を参考に学習しましょう。
今週学ぶの重要なポイントに対して、そのポイントを利用する問題を列挙しておりますので、そちらの問題群をセットで学習することが重要です。
3-3: 先週NOの学習方法
まず、週テスト・カリキュラムテストはもちろんのこと、組み分けテストにも活きてくる為、
今週の学習と共に、前週の見直しまでを行うことを習慣化すること
をお勧めしたいと思います。
もちろん、カリキュラムテストにおいては週テストと違って、2個のNOをまとめたテストになっています。テスト範囲の後ろの方、(例えばNO1〜NO2のNO2)を翌週に復習しても次回テスト(No3-4)には出題されることはありませんので、No1は翌週に復習できたとしても、No2の復習の意義は感じがたいかもしれません。
それでも、記憶の長期定着そして、組分けテストへの布石になりますので、できるだけ「今週の学習は翌週もう一度復習しておく」と言う習慣をつけておきましょう。
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冒頭の出題割合で申し上げたように、週テストの25%、カリキュラムテストの範囲となっている前のNOの40-45%は、先週のNOから出題されていることから、先週学習した内容にも復習をかけていきましょう。
そこでは、一周目の段階でつけられた記号を元に、再度やり直しを行います。
時間がなければ△と×の問題を、一定時間があるのであれば○の問題まで含めて(つまり◎の問題以外)を行います。
一見すると非常に時間がかかるように思えますが、一周目の時点で丁寧に身につけられていれば短時間で終わるようになるはずです。そこまで到達できれば、週テストやカリキュラムテストでは高得点が期待できる状態になっていることが多いでしょう。