志望校別冬期講習・正月特訓の目的/学習法/プリントの種類と難易度

サピックスでは毎年、12月25日頃〜1月6日頃まで受験生の最後の季節講習として志望校別「冬期講習」「正月特訓」が実施されます。

講習は、連日続き、中休みが1〜2日程度しかない過酷なスケジュールとなっておりますが、それぞれの志望校の中で重要な問題だけは「授業で取り組んで、そのまま」とならないよう、家庭での復習を行っていきましょう。

1: 受験生「冬期講習・正月特訓」の概要

1-1: 模擬試験形式のプリント中心

講習は「志望校(に近しいレベルの学校)の模試を解く」ことが授業の中心になります。授業時間の都合上、冬期では1回、正月では2回分の模試に取り組むコースが多いようです。

何を目的とした演習なのでしょうか?

実際の試験とほとんど同じ制限時間で模試に取り組むことで、

1: 解ける問題をミスなく確実に合わせる力
2: 正解までが遠い問題、難問を見極めて見送る力

この2つを否が応でも意識せざるをえません。

制限時間内でいかに自分の最高到達点を出せるかどうか?を鍛える講習だと言えるでしょう。

第11回までのSS特訓と違いはどこにあるのでしょうか?

SS特訓は志望校で狙われる技術を身につけることが目的です。そのため「単元別」または「似たようなレベルの問題(入試で合否を分けるような難問)」を集めたプリントになっていました。

冬期講習や正月特訓のプリントはSS特訓とは全く異なり、分野・レベルは様々な問題を1つのテストとして取り組みます。冬期・正月はSS特訓で磨いた技術を実際に取り出し、得点につなげる練習の場として位置付けられていると考えて良いでしょう。

例えば、慶應普通部コースのように、偏差値は高いものの試験自体は比較的易しい問題セットである学校であれば、「合否を分けるような問題」ばかりを集めたこれまでのSSプリントよりも、冬期講習・正月特訓の方が、「受験生なら確実に解ける問題」も多く混ざっているため簡単に思えることでしょう。

反対に、開成・桜蔭・麻布コースなど算数が難しい学校の模擬試験では、SS特訓で習いきれていない新出技術や重量級の思考力問題が出題されることがあります。こういったものは例え実戦演習と言えどもできる限り復習し技術を身につけておく、思考の筋を辿っておくことが重要です。

繰り返しになりますが、「既に身についた技術を取り出す訓練」が冬期・正月特訓の目的であり、そのような構成になっています。つまり「身についていない、すっかり忘れている技術が多い」お子様については、「講習のやり直しに追われ、結局出会った技術を使いこなせる状態に到達できないまま次に進んでしまうこと」が危惧されます。

「苦手分野の補強 → 講習のやり直し」という構えで望んだ方が最終的な到達点は高くなるケースもありますので、「1問1問のやり直しに時間がかかっている」「解法自体を忘れていた、解説の理解に苦しむケースが多い」場合は注意しましょう。(こちらについては3-2:苦手分野の補強の部分にて後述させていただいております。)

1-2: SS再復習テスト

冬期講習〜正月特訓では、過去11回分のSS特訓の「再復習テスト(SSプリントの数値替問題)」が配布されるコースがあります。

SS特訓は、初めて習うような高度技術を習得することの多い講座ですが、こういった高度な技術は5年生から何度も何度も繰り返してきた土台の技術に比べて、SS特訓だけでは練習量や頻度が足りず、現時点でまだ身につけられていないお子様も散見されます。

お子様に非があるのではなく、単に練習量の問題ですから、最後にもう一度復習をかけて高度な技術を確実に身につけることを目的として配布されているのが、SSの再復習テストになります。

1-3: Winter SAPIX(青色テキスト)

これまでのサピックスの季節講習と類似したテキストになります。

各NOで、中学受験主要分野を1つ1つ総まとめ(A-E)するコーナーに加え、過去の合格力判定サピックスオープンかと思われる「冬期実戦演習」で構成されています。

後半の合格力判定サピックスオープンは実戦演習の1つということで、志望校別コースで志望校の模擬テストが配られているのであれば、取り組まなくとも良いでしょう。

反対に、分野の総まとめ(A-E)は、本当に受験の鉄板技術がまとまっているテキストになり、難しすぎるものはありません。

こちらのテキストをメインで利用されているというコースはほとんどありませんが、いわゆる中堅校を目指している方、第2・第3志望であるものの合格確実に達していない方にとっては有効な内容になっています。

2: プリントの種類と難易度

冬期講習・正月特訓で配布されている主要コースのプリントは以下となります。

配布されることが多いクラス冬期講習正月特訓
開成及び、筑駒・渋幕クラスWSKA

WSKA 実力テスト

冬期講習 開成中模試
NYKA

正月特訓入試必勝実戦演習 KA
麻布・栄光クラスWSAZ

WSAZ 実力テスト

冬期講習 麻布中模試D

(麻布中合格パスポート)
NYAZ

正月特訓入試必勝実戦演習 AZ
桜蔭及び、桜蔭を含む最難関コースWSOU

WSOU 実力テスト

桜蔭中学校入学試験対策
(NYOU)

正月特訓入試必勝実戦演習 OU

女子学院・雙葉・フェリスなど桜蔭を含まない女子最難関クラス

(JG特訓 W)

(JG特訓 NY)

正月特訓入試必勝実戦演習 TJ-A/(SJ)

 

雙葉単独コース(WSFU)

NYFU

武蔵単独コース(WSMS)(NYMS)

(正月特訓入試必勝実戦演習 MU)
駒東・海城(渋幕)を冠に含むコース冬期入試必勝実戦演習 KTNYKT

(正月特訓入試必勝実戦演習 KT)

(正月特訓入試必勝実戦演習 MK =幕張)
慶應を含むコース慶應普通部模試
※表紙に「20XX年度 慶應義塾普通部入学試験問題」と記載のあるプリント
慶應普通部模試
※表紙に「20XX年度 慶應義塾普通部入学試験問題」と記載のあるプリント

正月特訓入試必勝実戦演習 KF
※慶應普通部と類似

(正月特訓入試必勝実戦演習 KE)
※慶應中等部と類似
早稲田系のコース入試必勝実戦演習 WA

(早大学院対策プリント)
正月入試必勝実戦演習 WA

(正月特訓入試必勝実戦演習 WJ)
中堅〜難関校プリント(冬期講習GOプリント)(正月特訓入試必勝実践演習 GO)

冬期・正月特訓のほとんどのプリントは、「実際の入試の形式」となっています。

前述いたしましたように、開成・桜蔭・麻布・駒東コースのプリントはSS特訓級の難問が入っているのですが、それ以外のコースについては、SS特訓より一部の問題が易化している印象です。

なお、その開成コースでも、難易度の高かった「WSKA」や「冬期実戦演習」より、比較的軽い「WSKA 実力テスト」が配布されているコースが大多数であることから、SSKAより軽く感じる、というお声をいただいております。

コベツバでは、ほぼ全コースのプリントの全問解説の配信を予定しております。(()で囲われているプリントは配信を行っておりません。)

3: 「冬期講習・正月特訓」の学習方法

3-1: 得点最大化のための振り返り

「冬期講習・正月特訓」の最大の目的は、「制限時間内で得点を取り切る」訓練を行うことにあります。

「制限時間内で得点を取り切る」ためにはテスト最中の判断と、その判断をテストが終わってから振り返ることが何より重要です。

講習で疲れている中ではありますが、記憶が薄れないうちに

「時間配分は良かったのか?」

「問題難易度の推定は正しかったのか?(簡単なものを難しいと思い込んだり、難しいものに執着しなかったか)」

「惜しいミスをしていないか」

この3点だけは振り返りを行いましょう。

コベツバの解説ページではそれぞれの問題に難易度を記載しております。難易度が高いもの以外を全問合わせるだけで、開成・筑駒を除くほとんどの学校は十分合格することができます。

「試験のときはとにかく夢中で問題を解いてしまって戦略を考えることを忘れてしまう!」。こういったお子様は、まずは試験時間内にかかった時間を記載しておくことやレベルの推定をテスト用紙に記載しておくことから始めましょう。

実際のところ、ボーダー層のお子様の合否を決めているのは、本当に5点・10点の小問です。これまで培った実力をどこまで出し切れるか、が勝負になりますから、苦手分野の補強がおおよそ終わっているお子様は、最後の1ヶ月で「得点最大化」にフォーカスして合格を掴み取りましょう。

詳細はこちらの記事に記載しておりますので、是非あわせてご覧ください。

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正直申し上げますと、冬期・正月特訓は拘束時間が長く休みがほとんどありません。

翌日や中休みにて、テストの取り組みについての振り返りと、「解けそうで解けなかった問題」「解けたけれど時間がかかった問題」のやり直しを行い、解法を思い出しておくことでも十二分な取り組みである、と言えるでしょう。

3-2: 苦手分野・単元の再チェックと再補強

志望校合格を確実にするために、取り組むべき苦手分野×レベルがわかっていらっしゃらない方、既に対策をしたものの現在の出来を把握できていない方は、冬期・正月の模擬試験の中で最後の1ヶ月、お子様が何を補強すべきかを見極めていきましょう。

過去問を使った場合と方法は同じですから、下記の記事を参考に補強・再補強する分野・単元を明らかにしておきましょう。

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講習に通う前から、苦手分野や取り組むべき内容が明らかであるというお子様については、冬期正月の復習は程々に、苦手な分野や単元を徹底して鍛え上げましょう。

なぜなら、冬期・正月特訓は「学習してきた内容を取り出す訓練」であり、「本当に忘れていた単元」「理解が怪しい単元」をその1問で完全に身につけ、本番で使いこなすことはとても難しいことです。

「これは理解が怪しいな」「これは忘れてしまっていた」と思われる分野・単元がある場合は、その問題の復習だけで終わらずに、当該分野・単元の問題を連続で解くことで体系的な理解ができると言えるでしょう。(サピックスの過去テキストを利用することでも良いですが、コベツバをご利用の方は中学受験算数の重要技術を網羅するコベツバweb授業や、最難関で必須となる発展技術を網羅するTopGun特訓をご利用いただいても良いでしょう)