甲陽学院中入試の解体新書 | 過去問データに基づく算数傾向分析と対策

中学受験コベツバでは甲陽学院中学入試(算数)の出題傾向をデータを用い徹底分析した上で、対策の方向性を配信中です。

甲陽学院中の最新入試の算数解説動画、難易度・傾向分析などは以下からご覧いただけます。

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2024年甲陽学院中入試の基本データ

甲陽学院中学偏差値(サピックス/浜学園/日能研)

 サピックス四谷大塚浜学園日能研
2024
2023606466
20226064
2021605966
2020605966

甲陽学院中学の受験者・合格者数・受験倍率推移

 受験者合格者倍率
2025
20243732201.70
20233662211.66
20223272111.55
20213802151.77
20203832171.76
20193932201.79
20184022221.81
20173692191.68
20163822201.74

倍率は1.5-1.8倍を推移しており、2倍を切っています。
倍率が2倍以下でありながら変わらず進行し続けられているのは全国的にも非常に珍しいのですが、同じ特徴の学校に関東の最難関女子校である桜蔭中があります。

甲陽学院中学の合格最低点・合格者平均点・受験者平均点

【3科目】

 合格最低点合格者平均点受験者平均
平均277.3 (55%)312.2 (62%)284.7 (57%)
2025
2024263294.0269.3
2023274308.4282.4
2022301337.5313.2
2021285316.4286.2
2020288321.1292.8
2019280315.4284.6
2018273311.8276.3
2017276311.0283.4
2016271304.2278.6
2015262301.9280.2

【算数(2日間の合計)】

 合格者平均受験者平均
平均128.0 (64%)111.9 (56%)
2025
2024101.688.9
2023115.0100.8
2022150.1134.2
2021143.8125.1
2020129.0111.1
2019122.6104.1
2018141.4120.4
2017130.5113.2
2016119.0105.8
2015127.2115.2

【算数(1日目)】

 受験者平均
平均59.6 (60%)
2025
202441.8
202353.2
202273.0
202161.9
202060.7
201963.8
201862.1
201758.9
201658.3
201562.1

【算数(2日目)】

 受験者平均
平均52.3 (52%)
2025
202447.1
202347.6
202261.2
202163.2
202050.4
201940.3
201858.3
201754.3
201647.5
201553.1

まず、2つのことが伺えます。

1つ目は、上述したこととも関わりますが、受験者平均が合格最低点とほぼ同じでほんの少しだけ上回っていること、です。桜蔭と同じく受験者は少ないものの、猛者揃い、その中で平均点を取れば合格することができるということを示しています。

2つ目は、算数の平均点が上昇トレンドにあることです。かつては平均点は40-50点でしたが、今や1日目は60-70点代の平均が出るようになっており、緩やかな易化の傾向にあります。また、1日目が易しく2日目が難しいという流れで進行していましたが、2021年と2024年は2日目は1日目よりも易しい問題になりました。

甲陽学院中学の科目別配点と試験時間

 点数制限時間
国語(1日目)100点55分
国語(2日目)100点55分
算数(1日目)100点55分
算数(2日目)100点55分
理科100点55分

甲陽学院中学の算数の合格への寄与度

 合格者ー受験者算数の合格寄与度
 4科目算数
平均27.516.158.5%
2025
202424.712.751.4%
202326.014.254.6%
202224.315.965.4%
202130.218.761.9%
202028.317.963.3%
201930.818.560.1%
201835.521.059.2%
201727.617.362.7%
201625.613.251.6%
201521.712.055.3%

過去10年の値は約60.0%弱となっており、なんと灘中の57.3%を上回る結果になっております。2日間入試という珍しい入試形態をとっていることもあり、1日間の入試以上に算数の寄与度は非常に高くなります。関東でもここまで算数の寄与度が高い学校はありません。(1位:武蔵 53.6%)

つまり、「全国屈指の算数勝負の学校である」ことが伺えます。

来年度の受験生に向けた甲陽学院中算数の対策

甲陽学院中算数の分野別出題比率

【1日目】

【2日目】

【2日合計】

1日目、2日目ともに上位5分野が他分野に突き抜けており、5分野間の比率は年度ごとに変わっているのでそこまで参考にならず、ほぼこの5分野が均等に出題されていると考えるのが妥当な見方かと思います。

5分野とは、

●速さ
●立体図形
●数の性質
●場合の数
●平面図形(割合有)

で、まとめて1-2日目で70%を超えて出題されており、明確に焦点を合わせて出題されていることが伺えます。

甲陽学院中算数の難易度比率

1-2日目トータルで甲陽受験生のほとんどが正答できるだろうレベルAが52%、受験生の中で出来が分かれるレベルBが41%、合格者平均が65%と言うことで、レベルA完答+レベルBの3分の1を得点することで到達することができる計算になります。

つまり、そうなると、合格の為には、
●1:鉄壁の基礎でレベルAを抑える
●2:頻出分野でレベルBにアタックして3分の1をもぎ取る
と言うのが大戦略となります。

入試及び合格ラインの構成としては、●1部分の比重が高いと言っても良いかもしれません。ここまで書いてきて、上でも記載したように同じく算数の合格寄与度が関東最高レベルの聖光学院中と合格ライン突破者の像が近い印象を持ちました。鉄壁の基礎を持っている子、つまり堅実に進化していく形での努力ができる子に入学して欲しいと言う入試内容になっているのではないかと考えます。

勿論、レベルAでかなり落としてレベルBや Cで得点する合格者も一定数いるでしょうが、合格者平均がA完答+Bの3分の1という構成であれば、ボリュームゾーンはそこではなく、Aを固めてレベルBに果敢にアタックして取れる部分をなんとかもぎ取って来た、そんな人が多く入学している気がします。

甲陽学院中算数の難易度×分野別出題比率

まず、レベルAからです。
<レベルA、分野別出題率>

上記の主要5単元が上位5つを占めています。
繰り返しになりますが、レベルAを仕留めなければ合格の切符が手に入らない為、やはり5単元が対策の主軸になることを示していると言えます。

<レベルB、分野別出題率>

レベルAと同じく主要5単元がやはり上位5つを占めており、特に「立体図形」「場合の数」の比率が高い特徴を持ちます。これは全国の最難関校の多くに共通の特徴と言えます。
次に来るのが「速さ」、そして「数の性質」と並んでいます。

<レベルC・D、分野別出題率>

主要5単元に割って入っているのが第3位の「規則性」。むしろ、甲陽の問題を連続的に解いていると規則性に目がいくのですが、A・Bの主軸ではなく難しいものは受験会場のみんなもできていないという解釈をすることが出来ます。
尚、規則性は、近年関東圏での出題が目立つ発展的な技術である「フラクタル数列」「ままこだて」をいち早く出題したり、筑駒や麻布など関東難関校の流行りである規則性の発見系を出題するオピニオンリーダーの1つになっていることも触れておきます。

それでは以下で甲陽のレベルBの出題比率の上位3つの単元である「速さ」「立体図形」「数の性質」について傾向と対策を記載していきます。

甲陽学院中頻出の「速さ」の対策

全体を見渡して気づくことは「近過去に出題された同じ論点・同じ技術」の問題を避けて、出題していることです。甲陽の速さは「●●」が複数回出題されているということが言いづらい特徴を持っています。
これは、問題の選定側が意図的に選定しているのではないかと考えられます。そして同時に出題者の先生は「速さのポイントを言語化して掴んでいる」ことも言えるでしょう。そうでなければ重複が頻繁に発生しがちなのが「速さ」と言う単元だからです。

ここまでで何回か比較対象として挙げた神奈川の聖光学院でも「速さ」は頻出ですが、使う技術は例年被りが非常に多く、さらに解像度を上げた時に味わいが異なる問題で構成されていますが、甲陽の場合は明確に「言葉で捉えられるポイント・論点」が非常にバラエティに富んでいて、狙って被りがない異なるものを出題している印象を持ちます。

とは言え、受験算数には制約がありますから、どこかで重複のタイミングは必ず出て来ることも事実です。

では、出題の傾向を踏まえて受験生はどうすれば良いのかと言いますと、

「技術的な網羅性を上げること」
「技術の頭出しを言語化すること」
だと思います。

出題者側が横に広げていく形での出題を取っているのであれば、横に武装すべきです。
(いつもいつも線分図書いて、同時記号を書いて、比の使える場所を探す)といういわゆる速さの応用問題として、出題が多い分各塾のテキストでも数多く経験するものを解いて習熟することではなく、

「速さ」の分野における技術を網羅的に手の内に入れていき、それぞれの技術をどういう時に選択するのか、を言語化していくと非常に対応力を上げていくことができるかと思います。

上述のように、なんとなくいつも使う技術でカチャカチャやって解けた、というものではなく、近年出題されることがなかったオチから設計されている問題が多い為、そのオチの見破れるようになるかが勝負と言えます。
速さの問題においては、常に「なぜ、それを選択するのか」を1つ1つ書いていくことが地味ではありますが本番で見破れるようになるための決定的な対策になろうかと思います。
<2019年2日目2番>

甲陽2019(2日目)2番

甲陽学院中頻出の「立体図形」の対策

2000年前後以前に比べるとスタンダードな問題を出題する傾向が強くなった印象を持ちます。

かつてはこの分野において全国屈指の問題で、受験生の誰もほぼ解けていないだろう問題を出題することがありましたが、近年の出題を見ていくと「ダブル切断」「連続切断」「小立方体の切断個数と形」など、全国の難関校・最難関校に共通して出題される論点が出題されており、突飛かつ難しすぎる難問に対応するための特殊な甲陽対策が必要ではなくなった印象を持ちます。

対策としては、応用・発展技術の網羅性を重視して、それぞれの技術を実践的に使えるように磨き込んでいくことに尽きるかと思います。一定の思考力要素を加味した問題の出題も上記の速さに比べると高く、技術の使いこなし、に力点が置かれている印象を持つからです。
<2020年1日目6番>

甲陽2020(1日目)6番

(1)

(2)

甲陽学院中頻出の「数の性質」の対策

近年少し易化の傾向が見えますが、この分野については元々は関東を中心とした学校に論点を輸出するオピニオンリーダーの役割を果たしていた印象があります。例えば2011年1番(2)の「約数の逆数の和」は、その後関東圏難関校の「海城中」や「駒場東邦中」で出題されております。

とは言え、近年は算数全体をやや易し目の構成に狙って来ていることから、数の性質の分野において国内をリードしていく論点が今後出題されるかどうかは不明な部分があります。

その上で、近年で言いますと「速さ」の分野と同様に「論点・ポイントが明確」な作り方をしているケースが多い印象で、いわゆるテキストに掲載されているものの応用・発展レベルとそう変わらない問題が多いです。ただし、ここも「速さ」と同様に近い年度の重複を避けている印象を持ちます。

つまり、対策としては「速さ」と同様に、ポイント・技術の網羅性を高めることと、その頭出し(●●だから、これを使う)ということに意識・力点を置いて学習していくことが結果に繋がっていくと考えることができます。
<2011年1日目1番(2)>

甲陽2011(1日目)1番(2)

甲陽学院中学志望者向けの対策・動画配信サービス

中学受験コベツバでは、上記の分析・出題傾向を踏まえて、甲陽学院中学志望の子供たちを対象に、以下のサービスを配信をしております。毎年、多数の甲陽学院志望者が算数強化を目的にコベツバを活用して、甲陽学院中に合格しています。

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