女子学院中入試の解体新書 | 過去問データに基づく算数傾向分析と対策

女子学院中学の解体新書とは?

女子学院中学算数の直近10年間の入試を解体・徹底分析し、一般の方からは非常に見えづらい入試および入試問題の特徴を明らかにすることを通じて、世間一般で言われている常識とは異なる考察をお伝えし、入試突破にあたっての体系的な指針を提供することを目的としております。

入試対策において「全ての科目、全ての分野、全てのレベルの全てのポイントを対策すること」は時間と能力に余裕があればそれがベストです、でもそれはあくまでも理想論です。

現実は、時間との戦い・屈強なライバルたちの戦いであり、その為には、時間対効果が高いと考えられる勉強を入試突破に向けて戦略的に行う必要があります。

改めて丁寧に分析して判明したことは、「基本問題が中心でスピードと正確性重視」と一般的に思われている女子学院中ですが、年度ごとのばらつきはあるものの2016年以降、難化していると捉えることができます。

まだ志望校対策に腰を据えて取り組む前段階である5年生や、追加の学習の余裕がない6年生前半でも、志望校を意識し、頻出単元の応用技術には積極的に手を伸ばしていくことで、6年生後半の志望校別特訓クラスのスタート時点でライバルと数段の差をつけることもできるでしょう。女子学院中突破の頂に向けて最短・最速で登って頂く為に、是非ご活用頂ければ幸いです。

女子学院中の最新入試の算数解説動画、難易度・傾向分析などは以下からご覧いただけます。

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女子学院中入試の基本データ

女子学院中学偏差値(サピックス/四谷大塚/日能研)

 サピックス四谷大塚日能研
2024
2023617066
2022617067
2021617067
2020617067
2019617066

女子学院中学の受験者・合格者数・受験倍率推移

 受験者合格者倍率
2025
20246422832.3
20236452752.3
20227092762.6
20216642742.4
20207462742.7
20197432812.6
20187172752.6
20176522782.3
20166732702.5
20158733402.6

2015年のサンデーショック(桜蔭と併願可能)を例外として除くと、2017年に受験者数が底を打ってから倍率は増加トレンドにあると言えるでしょう。

男子校にも言えることですが、女子学院の人気は「2番手×リベラル校への校風人気」というトレンドで解釈することができ、2019年サピックス偏差値が上がりましたが、今後もう一段階上がっていく可能性があると言うことができます。また、合格最低点等の情報は公には開示されておりませんが、近年の難化傾向を受けて65%程度だろうという話を聞くことが多く、受験者は合格ラインとして70%を目指すと良いでしょう。

ここからは、一番得点差がつきやすい科目(※1)である算数について、記載していきます。

※1:科目別合格寄与度

合格者と不合格者の間で生まれた点差「合格者の平均」ー「不合格者の平均」にそれぞれの科目がどの程度影響があったかを表す指標となります。

残念ながら女子学院は平均点を公開していませんが、受験者の8割が受験する「学校別サピックスオープン」過去6年の結果を用いて分析した結果、6年間全体で見ると、得点差の38%が算数、18%が国語、理科24% 社会20%で形成されており、4科平均型であるものの、それでも「合格者がつけた得点差の約4割は算数で形成されている」と言えます。

女子学院中学の科目別配点と試験時間

 点数制限時間
国語100点40分
算数100点40分
理科100点40分
社会100点40分

4科目均等配点であること、高得点勝負であること、から苦手分野をなくした上でミスが許されない勝負となります。また、上記に加え、グループ面接及び小学校校長の報告書の総合を考慮して合格を判定しています。

女子学院中学の算数概観

女子学院中学の算数 配点

女子御三家は合格最低点や平均点が基本的に非開示である為(豊島岡は公開してくれています)、どうしても「事実」を掴むことが困難となり推論に推論を重ねることになってしまいがちなので、まずは明らかになっている「配点」と言う部分から見ていきたいと思います。

以下のグラフは入試全体の中での算数が占める配点の割合を表したものです。

女子学院中学の算数の配点割合

女子学院の配点は4教科均等型で、算数・国語・理科・社会が100点ずつの配点となります。その結果、100/400で25%と言うことになります。雙葉と豊島岡は100/300で33.3%、桜蔭は100/320で31.2%となります。

何が言いたいかと言いますと、算数は多くの学校でその配点の中で差がつきやすい科目であることが事実なのですが、女子学院の場合はその差が薄まりやすい、ということになります。先ほど申し上げた「算数の合格寄与度」は38%と、他科目に抜きん出て高いものの、桜蔭が45%であることと比較すると低くなっており、「算数ができさえすれば合格をつかめる」という学校ではないことを予め伝えておきます。

(余談ではありますが、算数以外の3科目、特に国・社がよくできて、算数が苦手というJG志望者に算数指導を行ってライバルと差がつかないorライバルを上回るレベルまで到達して合格する、というケースが家庭教師時代によくありました。)

女子学院中学の算数 単元別出題比率

まず、算数の大きな単元別に過去11年間の配点を想定し集計した分野別出題シェアと出題比率の表が以下となります。

(実際の正確な得点は分かりかね、あくまでも想定値での算出となります。)

まず整理・分析してみると目につくこととしては、感触通り「文章題(割合有)」「文章題(割合無)」「平面図形(割合無)」の比率が高く、同じ御三家の桜蔭と全く違うどころが、もはやこの点では対照的な作りになっていることに気付きます。
▼参考記事:

『桜蔭中学入試の解体新書(2020年度版)』知っておくべき桜蔭の算数対策の全貌-過去問研究-
『桜蔭中学入試の解体新書』知っておくべき桜蔭の算数対策の全貌-過去問研究-

次に近年の特徴としては「論理推理」「速さ」の出題頻度が明確に上がって来ていること、です。2020年も最後の大問2問で出題され、しかも得点差がつきやすいレベルBあるいはレベルCの割合が大きい2問でした。

特にJG志望者の中には「思考力問題が苦手」と言う人が多く避けがちなまま高学年を迎えるケースが多く、そのままAタイプ優位校と言うことで「思考力」の訓練をしないままに入試を迎えてしまうことも多く、結果として決め手になる問題を逃してしまうことにも繋がっている可能性があります。現在4-5年生でJG志望者はまだ余裕があるうちにこそ、思考力問題へ取り組む習慣をつけると良いでしょう。

また、10年間の得点比率を高い順に円グラフにまとめたものが以下となります。

頻出分野が綺麗に出ており、以下の算数主要5分野と捉えることが出来ます。

1: 「速さ」
2: 「文章題(割合有)」
3: 「平面図形(割合無)」
4: 「論理・推理」
5: 「水と水グラフ」
6: 「文章題(割合有)」

となり、これら6分野で全体の70%弱を占める構成となっています。

続いて難易度比率です。

女子学院中学の算数 難易度比率

この8年間に出題された問題を以下のように難易度レベルで表現しました。

◯A=女子学院受験者の多くが正答できる問題
◯B=女子学院受験者の中で、正答できるかどうかが分かれる問題
◯C・D=女子学院合格者の多くが出来ていない人が多いと思われる問題

その結果、A・B・CDの全体の比率としては以下のグラフのようになります。

レベルAが53%、レベルBが約36%、レベルCDが12%という、ややAがまだ高いものの非常にバランスの取れた構成になっております。

意外なことに桜蔭と難易度比率に大きな違いはありません。昔からの印象にある「JGは易しい」という先入観とは違っていることが、この8年間の事実として浮かび上がってきます。

合格ラインの70%到達の為には、レベルA完答かつレベルBで半分得点が必要となり、受験生のうちの不合格者の得点が5-6割で留まっていると想定されることから、レベルBの得点力で合否を分けていると推察することが出来ます。

2019年「JGショック」?と2020年の大きな揺り戻し

2019年の女子学院の入試は「難化」し、「大崩れした受験生が続出」したという評判が立ち、私も同じく難易度の高さを感じました。そしてその翌年と2020年は大きく揺り戻し過去6年間難易度を挙げ続けた反動で10年前頃と同じくレベルAが70%を超える形になりました。2021年・2022年はまた2018年頃の「やや難」のレベルに落ち着きました。

作成側の意図としては、2019年は「やりすぎた」と言うことで、かなり意図的に易化させたと言うことを解釈します。ただし、とはいえ2020年を除くと10年程前に比べると難化を継続的に続けていたことも事実ですので、今後も2014-2018年頃のような難易度に落ち着くのではないかと想像されます。

女子学院中学の算数 難易度×単元比率

一旦、難易度レベルごとに出題単元のシェアを見ていきます。

まず、「レベルA=女子学院受験者の多くが正答できる問題」です。

全体比率の主要6単元と比べて見ると、「平面図形(割合無)」「文章題(割合有)」「文章題(割合無)」の比重が上がっていることに気づきます。 この3つの分野については出題頻度は高いものの、比較的易しい問題が多いと捉えることができます。

「平面図形・文章題」は比較的易しい問題が多く、「水と水グラフ」「論理推理」や比較的難易度の高い問題が多い、ということを推察することができます。

続いて、「B=女子学院受験者の中で、正答できるかどうかが分かれる問題」です。

主要6分野のうち、近年の後半の問題として配置されている「速さ」「論理・推理」「水と水グラフ」が上位を占めました。最も得点差がつきやすいい分野であり、この3分野については覚悟を決めて応用発展問題までやりきっていくことが最後にライバルを一歩上回る鍵になるのではないかと考えられます。

最後に、「C・D=女子学院合格者の多くが正答出来ていないと思われる問題」です。

「論理・推理」「文章題(割合有)」「場合の数」で65%を占めており、特にいわゆる「思考力問題」(サピックスでいうところのBタイプ問題)の難易度が高いことを示しています。

上述のように「論理・推理」への対策をおろそかにできなくなっているものの、最後の小問になるとさすがにレベルCの問題が多いことを示していると言えます。

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それでは、以下で各単元ごとの詳細分析と対策へと続けていきます。

女子学院中学の算数分野別の対策

ここでは、主要6単元のうちレベルBの上位4つの分野「速さ」「論理・推理」「水と水グラフ」「文章題(割合有)」の詳細と対策について記載させて頂きます。

女子学院入試の「速さ」(難易度・傾向・対策)

まず、レベルBで最も得点シェアの高い「速さ」についてです。

難易度:

「速さ」の単元のレベルごとの問題分布は以下の通りです。

レベルAが約半分、残りがほぼレベルBで有り一部レベルCもある。と言う構成になっており、女子学院全体のレベルB問題の中で最も出題数が多いのが「速さ」です。

傾向:

「速さ」の単元の過去10年間の小サイズの分野、論点別に分類したものが以下の表になります。


時計算通過算旅人算 流水算 
線分図ダイヤグラム(隔たりグラフ)式のみ線分図ダイヤグラム式のみ
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年
回数22233211

まず目につくのが、バラエティが非常に高いことです。

近年ダイヤグラム利用の問題の出題ありませんでしたが、2020年に出題されていること、また、難関・最難関校において「通過算」の出題は非常に珍しいのですが複数回に渡って出題していることも特徴的と言えますし、隔たりグラフの問題の出題もあり、10年間の配分としては申し分のない網羅性を担保しており、「どこまでも均等出題を狙って続けている」と言う印象さえ持ちます。

また、(1)で線分図から入り、(2)ではダイヤグラムを選択させると言う構成の問題が2020年と2012年に出題されています。

<女子学院 2020年6番>

(1) 解説

(2)前半 解説

(2)後半 解説動画

<女子学院 2012年6番>

(1) 解説動画

(2)前半 解説動画

(2)後半 解説動画

更には、2013年には流水算と通過算を合体させたような問題が出題されています。

<女子学院 2013年4番>

(1) 解説動画

(2) 解説動画

学校側の狙いとしては、「速さ」については、「問題、それも小問レベルに応じて適切に解法を選択できるかどうか」を問いたい、と言う狙いがあることが伺えます。

対策:

結論、「速さ」の単元においては、「論点・技術」の網羅性を最大限まで上げておくことが重要になると言えます。

「●●はできない」「●●は苦手」と言うものを作ってしまった場合、それが出題された時にどうしても致命傷になってしまう為です。

また、それだけではなく、「解法の切り返し(1)と(2)の解法が非連続」な問題への対応もできるようになっておく必要があり、自由自在に取り出せる状態を作っておく必要があると言うことになります。

女子学院入試の「論理・推理」(難易度・傾向・対策)

2番目は、「論理・推理」です。

難易度:

Bのシェアで57%、38%がC、残りがAと言う非常に難易度の高い分野になります。つまり、この分野においては「女子学院の受験生誰もが正解できる」レベルAの出題が低く、「出来が分かれる問題」と「(ほとんど誰も解けないので)捨てるべき問題」とに大別されていると言えます。

傾向:

「整理」から入って、「試行検証」と言うパターンの問題が非常に多く出題されています。

2020年は珍しく「読解」→「規則性の発見」と言う流れの構成でした。ただし、「規則性の発見」に行かずとも、「試行検証」することで(2)までを解くこともできる問題とも言えます。

少し具体的に見てみましょう。

<女子学院 2019年6番>

前半(両方出場) 解説動画

後半(サッカー卓球・全員) 解説動画

丁寧に整理をした後に、そのまま整理するだけで問題を解くことができず、必ず試行検証や場合分けの余地があって一手間二手間かけないと答えに到達できない問題を出題しています。

対策:

5年生までの時期において思考力問題、特に「整理」「試行検証」を要求するタイプの問題に継続的に触れていくことが大切です。また、忙しくなる6年生になってからも、定期的に思考力がなまらないように可能な範囲で経験しておく必要があります。

また、一定の整理方法を求める問題が多いことから、「整理方法の型」を自分の中にストックしていき、初めて見る問題でも自分なりの整理の型でまとめ上げる能力も培っておく必要があります。整理の型は「うまい整理方法」を学んで盗んでいくことで徐々に培っていくことができます。

女子学院入試の「水と水グラフ」(難易度・傾向・対策)

次に「レベルB」で3番目に得点シェアの高い「水と水グラフ」です。

難易度:

レベルBの比率が半分を超えている為、出題された場合に他分野よりも差がつきやすい単元と言うことができます。

傾向:

出題内容は、バラエティに富んでいます。これが何度も出題されているというポイントは見当たりません。また、入試問題の最後に配置され、推論を入れたり、試行・検証を入れたり思考力の要求も部分的に入っている問題も複数あり一発で答えを求められる問題を意図的に避けに来ている印象を持ちます。

具体的に見てみましょう。

<女子学院 2015年6番>

(1) 解説動画

(2) 解説動画

問題の構造自体を理解しやすいものの、面倒なものをどうやって処理していくべきか、という判断と緻密な思考の解像度が要求されるものです。

対策:

「技術武装は当たり前、それだけでは解けない応用問題も幅広く学習しておく」
と言うものが、水・水グラフの問題への対策になります。

特にこれを、というよりも幅広く学習しておくことを心がけていくべきで、食わず嫌いをして残したまま入試に臨むことは厳禁と言えます。

女子学院入試の「文章題(割合有)」(難易度・傾向・対策)

最後に「文章題(割合有)」についてです。

◯難易度:

「文章題(割合有)」の単元のレベルごとの問題分布は以下の通りです。

◯傾向:

文章題(割合有)という単元は幅広く、受験算数においてこの分野は更に細分化されていますので、まずはその分類を見てみましょう。

「食塩水」と「商売」という割合の一般的に出題頻度の高い分野以上に、「仕事算」の出題頻度の高さが目立ちます。内容的にも「範囲」を絡めたり、「セット×内訳」を書かせる腕力を必要とするものや、間違いを誘発させる「ものづくりの仕事算」など、一捻りした問題を出題して来ている印象です。

少し具体的に見て見ましょう。

<女子学院 2018年3番>

解説動画

典型的な仕事算のタイプから必ず一捻りを入れて来ているのがここからも見て取れます。基本問題を「早く正確に」解くことに慣れている子供たちに対して、どう扱っていいか分からない状態にすることを意図していることが伺えます。更に、食塩水や商売も同じように応用的な論点や、一定の思考力を要求する問題が出されていますが、「全く見たことがない」ような問題や論点がないことも特徴です。

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