武蔵中入試の解体新書 | 過去問データに基づく算数傾向分析と対策


『武蔵中学入試の解体新書』とは?

武蔵中学の直近9年間の入試を解体・徹底分析し、一般の方からは非常に見えづらい入試および入試問題の特徴を明らかにすることを通じて、世間一般で言われている常識とは異なる考察をお伝えし、入試突破にあたっての体系的な指針を提供することを目的としております。
入試対策において「全ての科目、全ての分野、全てのポイントを対策すること」は時間と能力に余裕があればそれがベストです、でもそれはあくまでも理想論です。
現実は、時間との戦い・屈強なライバルたちの戦いであり、その為には、時間対効果が高いと考えられる勉強を入試突破に向けて戦略的に行う必要があります。まだ志望校対策に腰を据えて取り組む前段階である5年生や、追加の学習の余裕がない6年生前半でも、志望校を意識し、頻出単元の応用・発展技術には積極的に手を伸ばしていくことで、6年生後半の志望校別特訓クラスのスタート時点でライバルと数段の差をつけることもできるでしょう。武蔵中突破の頂に向けて最短・最速で登って頂く為に、是非ご活用頂ければ幸いです。

武蔵中の最新入試の算数解説動画、難易度・傾向分析などは以下からご覧いただけます。

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武蔵中学入試の基本データ

武蔵中偏差値(サピックス/四谷大塚/日能研)

 サピックス四谷大塚日能研
2025
2024596567
2023616567
2022616567
2021606465
2020586565

武蔵中の受験者・合格者数・受験倍率推移

 受験者合格者倍率
2025
20245301773.0
20235791863.1
20226261783.5
20215741833.1
20205801883.1
20195691863.1
20185411852.9
20175771873.1
20165901873.2

武蔵中の合格最低点・合格者平均点・受験者平均点

【4科目】

 合格最低点合格者平均点受験者平均
平均190.0 (59%)207.9 (65%)175.3 (55%)
2025
2024206220.3191.4
2023182200.3168.4
2022202218.1185.6
2021183201.5169.9
2020187204.6172.9
2019185205.2170.5
2018201221.5186.9
2017180197.0165.5
2016184202.2167.0

【算数】

 合格者平均受験者平均
平均65.7 (66%)48.3 (48%)
2025
202474.159.5
202370.552.9
202270.951.4
202158.442.0
202071.954.5
201955.239.4
201866.946.3
201755.240.4
201668.148.6

武蔵中の科目別配点と試験時間

 点数制限時間
国語100点50分
算数100点50分
理科60点40分
社会60点40分

武蔵中学の算数の合格寄与度

ここでは、合格者と受験者との差が一体「どの科目が」「どれくらいの割合」で、他受験者との得点差を生み、合格に寄与したかを示す「合格寄与度」を独自に算出し、実際に合格した人は、受験会場にいた一般的な受験者と比べ一体何がどれくらい違ったのかを明らかにします。

まず、科目別の「合格寄与度」を、以下のような操作で算出しました。

1: 各科目の「合格乖離点=合格者平均点ー不合格者平均点」を算出

2: (各科目の合格乖離点)÷(全科目の合格乖離点)×100%で換算

結果は以下の通りです。

2014-2022年度の9年間の平均は54.2%(直近の11年間では53.9%)と非常に高く、2022年度は更に高く60%となっております。これは3教科入試である算数勝負の学校と言われる灘中の合格寄与度58%に次ぐ異様な高さであり、関東圏の難関校の中では最大となっています。従って、関東圏の難関校の中で、武蔵中が算数で最も決着しやすい学校であると言うことが出来ます。

武蔵中学の算数概観

武蔵中の算数 単元別出題比率

まず、大きな単元別に算数の過去9年間の配点を想定し、集計した入試問題の分野別出題シェアと出題比率のグラフが以下となります。(実際の正確な得点は分かりかね、あくまでも想定値での算出となります。)

下側のグラフを見てお気づきの通り、出題分野に強い偏りがある学校であることが伺えます。ほぼ毎年のように出題される分野と、ほぼ出題されない分野が明確である為、武蔵に向けた対策として分野を絞り込むことが対策として非常に有効であることを示していると言えます。全分野を網羅的に行うのではなく、頻出分野に寄せることで入試本番で出題される分野の経験値を高めて本番に臨むことができるからです。

出題率を上から順に並べて見ていきますと、

●「平面図形(割合有)」22%
●「論理・推理」19.8%
●「速さ」16.7%
●「文章題(割合有)」14.2%
●「数の性質」9.8%
●「図形・点の移動」5.6%

となっております。

また、過去問を1年ごとに分析を行った結果、その構成が明確になっていることにも気づくことができます。

ほとんどの年度で、大問1番には、小問が2問あります。ここでの出題は「数の性質」や「文章題(割合有)」の出題が多いです。続いての大問2-4番は、「平面図形(割合有)」「速さ or 点の移動」「論理推理 or 場合の数(思考力問題)」という分野で構成されているケースがほとんどです。勿論、それぞれの大問の中での順番が入れ替わっているケースもありますが、おおよそ出題の分野は明確に決まっており、学校側の潔さを感じます。

勿論、合格寄与度の算数の比率が異様に高いことから、「出題分野を決めていても、算数で大きな差がついている」ことは事実であり、出題される問題の難易度が高く、受験生の中で大きな差がついていると判断することができます。

武蔵中学の算数 難易度比率

過去9年間に出題された問題を以下のように難易度レベルで表現しました。

A=武蔵受験者の大半が正答できる問題
B=武蔵受験者の中で、正答できるかどうかが分かれる問題
C=武蔵合格者でも出来ていない人が多いと思われる問題

その結果、A・B・Cの全体の比率としては以下のグラフのようになります。

全体としては42.3%がレベルA、46.9%がレベルBで最大、残りの10.8%にレベルC・Dがあるという構成で、難易度を見ても差がつきやすいレベルBの比率が大きい構成になっていることが伺えます。このレベルBの問題群こそが、武蔵の算数における大きな差をつける問題になっており、それがそのまま全教科での差につながっていると言うことが出来ます。

武蔵中学の算数 難易度×単元比率

では、続いて難易度レベルごとに出題単元のシェアを見ていきます。

まず、「A=武蔵受験者の大半が正答できる問題」です。

ほとんどの分野が全体とは変わらず、大問1番で出題されやすい「文章題(割合有)」や「数の性質」、そして大問2から4で出題されやすい「速さ」「平面図形(割合有)」の中での小問群で構成されていると捉えることができます。一点だけ全体との違いで言いますと、「論理・推理」が上位から比率を落としていることが特徴と言えます。この大問は小問の途中からすぐに難易度が上がりレベルBになるケースが多く、他の分野以上に難易度が高いことが原因と判断することができます。

続いて、最も重要な「B=武蔵受験者の中で、正答できるかどうかが分かれる問題」です。

「平面図形(割合有)」「論理・推理」「文章題(割合有)」「速さ」「図形・点の移動」「数の性質」と、綺麗に頻出分野が並んでいます。結局は全体での出題比率そのままに対策をしていくべきであることが伺えます。また、「論理・推理」は技術要素がない純粋な思考力問題の出題です。尚、「図形・点の移動」は2019年と2022年に出題された「点の移動」の分野であり「図形の移動」の出題はありません。また、その2問の解法はともに「ダイヤグラム描き」であることから、学校側の出題意図としてはあくまでも「(広い意味での)速さ」として捉えた上で、出題していると解釈することができます。

その結果、「平面図形(割合有)」26.6%、「速さ+点の移動」22.7%、「論理・推理」17.5%が上位3つの分野と言うことができます。

最後に、「C=武蔵合格者でも出来ていない人が多いと思われる問題」です。

圧倒的に「論理・推理」が高く、続いて「平面図形(割合有)」が入るという構成です。頻出分野の中でも特に難易度の高い「論理・推理」はレベルAの比重が少なくレベルCの比重が多いので、継続的に訓練をした上で本番に臨んだとしても、全問を正解しにいくのではなく解けるところまでで切り上げる必要があると言えます。

また、「平面図形(割合有)」でも難易度の高い問題の出題があることは頭の片隅に入れておきましょう。

武蔵中学の算数分野別の対策

では、以下では合否を分けることになる大問2-4番で出題されることが多い「平面図形(割合有)」「速さ+点の移動」「論理・推理」のそれぞれについての対策について見ていきます。

武蔵中入試の「平面図形(割合有)」対策

○難易度:既に見てきたように難易度は高いです。また、(1)からいきなりレベルBの難易度の問題が出題されるケースも複数年度であり、その場合は(1)を間違えると全滅してしまう怖さがあります。

○傾向:割合有りの様々な技術をコンセプトに問題が設計されており、武蔵の過去問同士の中での重複が少ない印象です。また、自分で発想して様々なケースの補助線を引かせることを意図した問題が多く出題されていることも特徴と言えます。

<武蔵中 2017年2番>

(1) 解説動画

(2) 解説動画

いずれの問題も多くの集団塾のテキストの典型問題としてパターン学習するものでは見られないものの、入試問題の中では似たようなコンセプトの問題があります。

○対策

基本的な技術とその使い方を身につけることは勿論のこと、その先にある応用・発展問題について数多くの問題に触れて実践的な力を養成しておくことが望ましいと言えます。それぞれの問題について、全く新しいコンセプトの問題と言うものではありませんので、あくまでも訓練がものを言う分野だと判断できます。

それぞれの技術をベースにした応用問題を訓練するには、コベツバweb授業の「コベツバくん(指定した技術×難易度で問題(解説動画付き)を作成することが出来る個別学習機能)」が効果的だと思います。

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武蔵中入試の「速さ+点の移動」対策

○難易度:頻出分野の中では比較的解きやすい単元となります。上記の難易度グラフの中でもレベルCの出題がほとんどない分野でもあり、対策を徹底することで得点力を上げやすいと言えます。

○傾向:2016年までは「線分図系」が中心に出題されていましたが、2017~2022年では「ダイヤグラムを自分で書かせる問題」が4回出題されており強い傾向を示していると言えます。尚、点の移動は、ここまでのところあくまでも「速さ」の一分野として捉えることができる問題が出題されています。

<武蔵中 2017年3番>

解説動画

<武蔵中 2019年3番>

(1) 解説動画

(2) 解説動画

(3) 解説動画

○対策:少し前までの武蔵の速さは「線分図系」が中心でしたが、上述の通り、近年は「ダイヤグラム系」が中心と、軸足を移している印象です。従って、対策においてもその更新が必要です。また、「ダイヤグラム系」と言っても、「自分で書かせる」タイプを好んでいることから、「いつ、どういうケースで、ダイヤグラムを書くのか」を完全に手の内に入れられているかが鍵を握ります。勿論、近年出題が減っている線分図系の対策も疎かにせず、確実に身につけておきたいところです。

武蔵中入試の「論理・推理」対策

○難易度:難易度は非常に高いです。ほぼ全ての大問で言えることですが、最後の小問まで解き切ることは難しいです。従って、あくまでも途中の小問まで得点した上で、残りの時間を見直しに使うか、最後の小問まで登っていくかを判断することが重要になります。

○傾向:原則的には思考力問題で、技術要素はほとんどありません。その大問の中でルールが提示され、多くの場合は「調べ上げ」「場合分け」「試行検証」をして進んでいく問題となります。

<武蔵中 2019年4番>

(1) 解説動画

(2)ア 解説動画

(2)イ 解説動画

(3)ア 解説動画

(3)イ 解説動画

○対策:思考力問題への対応力を長期的に上げていくことが求められます。短期的な能力向上を期待するのではなく、1~2年がかりで少しずつ磨いていくことが求められます。技術的な問題と違って、あくまでもその場で考えて進んでいくタイプの問題ではありますが、その骨格となるアプローチは訓練と他の人の進め方を真似していくことで磨かれていきます。コベツバweb授業の「思考力テスト講座」で訓練していくことをお勧めします。

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