今回は、「つるかめ」と「不定方程式」の違いについてお話させて頂きます。
塾講師・プロ家庭教師時代〜今に至るまで、沢山の6年生に、「どっちを使うべきかわかりにくい」「判別方法を教えて欲しい」という声を頂いて、その都度お答えしてきました。
確かに私自身が講師を始めたての時にも「分かりにくいし、全部不定方程式でいいじゃん」と思ったように、2つの効果的な使い分けは算数がよくできる人にとっても判断が難しいものなのだと思います。
ここでは、それぞれの技術がどういう時に使う判断を行うのか、を具体的な問題を例に挙げて説明させて頂きます。
1: 未知数と式の数による分類
まず、以下の表を見てください。
「未知数」と言うのは、「わからない数」のことで、「つるの数」「かめの数」だったり「5円玉の数」「10円玉の数」だったりします。
「式」と言うのは、大きく「和の式」と「関係の式」に分かれており、両方の合計の数を考えます。
「和の式」は、「合わせて何匹」「合わせて何枚」だったり、「合わせて何円」「合わせて足が何本」です。「関係の式」は、「つるは亀より3匹多い」「10円玉と50円玉が同数」のように未知数同士の関係を表すものです。
表をご覧になって頂くとわかる通り、
・未知数の数=式の数 →つるかめ
・未知数の数>式の数 →不定方程式
というのが、基本の構えです。
確かに不定方程式はどの場合でも適用できなくはないのですが、「不定」と言うだけあって、答えが複数出てそこから探す工程が出てくる為、まずは上記の基本の構えを知っておくことが重要だと考えております。
以下では、具体的な例を挙げて理解を深めて頂きます。
2: 未知数2つの場合
「つるかめ算(面積図)」ポイント動画
「不定方程式」ポイント動画
2-1: 未知数2つ、式2つ(和の式が2つ)
つるかめ◎
「つるかめ算」問題解説
2-2: 未知数2つ、式1つ(和の式が1つ)
つるかめ×不定方程式◎
「不定方程式」問題解説
まさか上のものを方程式で解く人はほとんどいないでしょう。結局、「未知数の数=式の数」の場合はつるかめで自然に解いてしまっているのが未知数2つの場合なのですね。
3: 未知数3つの場合
「3つのつるかめ」ポイント動画
「3つの不定方程式」ポイント動画
「あまりの世界」ポイント動画
3-1: 未知数3つ、式3つ(和の式が2つ、関係の式が1つ)
3つのつるかめ◎3つの不定方程式△
「3つのつるかめ」問題解説
「3つの不定方程式」問題解説
3-2: 未知数2つ、式1つ(和の式が1つ)
3つのつるかめ×3つの不定方程式◎
「3つの不定方程式」問題解説
2つの和の式に加えて3つ目の式である「関係の式」があれば、その時点で「つるかめ」と判断します。勿論、不定方程式でも解けますが、下の問題に比べて「全部出す必要がない、探す手間がかかる」ことになっています。
それでも、不定方程式で解けるしある種万能なので、不定方程式で突っ走るのがいいのではないか、と思われるかもしれません。
その上で、以下に続きます。
4: 狙われた「差のつるかめ」
「差のつるかめ」ポイント動画
2019年度、「麻布」「女子学院」で同時多発的に出題されたのが「差のつるかめ」です。
こちらも、不定方程式で解けなくはないのですが、差の条件を使った不定方程式は学習機会が少なく腕に自信がある受験生でもかなり時間がかかることが多いです。
それ故にここでは「つるかめ」が効いてきます。
未知数2つ、式2つ(和の式が2つ)→つるかめ
未知数2つ、式2つ(和の式が1つ、差の式が1つ)→差のつるかめ
ということになります。
「差のつるかめ」問題解説
同じく、3つの場合。
未知数3つ、式3つ(和の式が2つ、関係の式が1つ)→3つのつるかめ
未知数3つ、式3つ(和の式が1つ、差の式が1つ、関係の式が1つ)→3つの差のつるかめ
「3つの差のつるかめ」問題解説
結局、「和の条件」が「差の条件」になった場合において、差に注目した形でつるかめの表を書いていくことでゴールに到達できるわけです。この場合、不定方程式ではかなり遠回りになりますので、不定方程式一辺倒ではなく、つるかめを普段から使い慣れていることが重要になってくると言うことです。
最後に、麻布2019年1番の「差のつるかめ」を挙げておきます。
「麻布中学2019年1番」問題解説
(1) 解説動画
(2) 解説動画
以上です。
少しでもご参考になれば幸いです。