先日の記事(「抽象化能力」とは何か?)について、抽象化能力について記載頂いておりましたが、我が子の能力がどの程度なのか、やはり気になります。抽象化能力が高い子供、低い子供にはどのような特徴があるのか教えて頂ければ幸いです。
ご質問頂き、有難うございます。
今まで、多くの抽象化能力が高いお子様、低いお子様、そして初期は低かったお子様が徐々に成長していく姿を見てきました。その中から抽象化能力が低いお子様・高いお子様が勉強に向かうシーンでは具体的にどのような様子なのか、どのような言動が見られるのかを、お伝えさせて頂きます。
抽象化能力が高いお子様のケース
まず、抽象化能力が高いお子様のケース、をお伝えさせて頂きます。
サピックス(SAPIX)に通われるお子様の例を挙げさせて頂きますと、デイリーサポート/サピックスの問題を1-2問やるだけで、他の類題も同じ論点だと認識して解けるようになります。デイリーサポートの数値替えの問題は勿論のこと、組分けやサピックスオープンで出題された問題も同様です。その延長線で、入試においても同様です。あの時に習ったこの論点だと判断して解決することができるのですね。
そのため、勉強の最中には
「この問題もさっきの問題と一緒だ!」
「つまり、こう考えればいいのか」
というような発言が多くなります。
また、更には抽象化思考を身につけている場合、具体の問題ごとではなく論点ごとに記憶することで、記憶しなくてはいけない量が減少します。
その結果、時間が経っていても定着していることが多く、復習の頻度や復習の際に忘れているものが少なくなります。結果、復習の時間も減少することになり、ある種、よいことづくめになるのですね。
抽象化能力が低いお子様のケース
逆に、抽象化能力が低いお子様のケースも、お伝えさせて頂きます。例えば、デイリーサピックスの問題はなんとかできても、数値替えのデイリーサポートの問題は出来ない。または、数値替えならなんとかなったとしても、少し捻られると解けない、ということが発生します。
そのため、勉強の最中には
「えーさっきと変わったからわかんない」
「これは習った記憶がない!初めて見る。」
「これ、このまま丸覚えしたらいい?」
というような発言が多くなります。
その結果、毎週の学習に時間がかかり、また同じく数値替えでほぼ全問が構成されているデイリーチェックでも得点がなかなか出来ない状態になります。またはそれができたとしても、マンスリーや組分けの中の数値替えではない問題などで、テキストそのままではない問題が解けないということが発生してしまいます。学習済の論点と同じ問題が、テストや入試問題で出題された際も、「同じ論点だ」という認識を持つことが出来ず、算数で得点を落としてしまうのです。
保護者様や先生方からすれば、「教えて、出来ていたはずなのに、何故出来ていないの?」というのは、忘却の問題だけではなく、「そもそも抽象化して理解出来ていない」という問題のケースが多いということになります。
また、更には抽象化思考が弱いと、一つ一つ具体の問題ごとに覚えなければ得点が出来ないため、記憶しなくてはいけない量が増加します。更には、その方法では記憶には残りにくく、復習をする頻度が多くなったり、復習した時に忘れていて再度学習し直すことが多くなります。結果、復習の時間も増加することになり、大変な状態になってしまうのですね。
ただ、これは極端な例であって、多くのサピックス(SAPIX)生は、上の二つの中間地点に存在しています。もちろん一度習っただけで、要点を掴んでしまう一部の非常に優秀なお子様ももちろんいらっしゃいますが、難関校に合格するほとんどのお子様は、スタート時点の能力自体に大きな差があるわけではありません。
記事でもお伝えさせて頂いた通り、抽象化能力自体は、少なくとも小学生の間は、向上させられますので、保護者様のお子様が、例え抽象化能力が「現在のところ低い」となったとしても、まだこれから向上するという期待を持って頂きたいと思います。教育に携わる人間が、「この子はこんなものだ」と思うことが、子供達に伝染して子供が自分自身の可能性を信じられなくなる為です。ご質問者様は勿論大丈夫かとは思いますが、念のため、お伝えさせて頂きます。
少しでもご参考になれば幸いです。