こんにちは。
毎年4月、小学校6年生の中で「ケアレスミス」が多発しているようです。
複数の方からコベツバにそのようなご相談が寄せられました。そして、その中には「本来は堅く正答させる力を持っている子ども達」も含まれていました。
でも、この流行は「例年のこと」でもあります。
インフルエンザが流行る時期が割と決まっているように、「ケアレスミス警報」も発生しやすい時期は、やはりあります。
今回の記事では、子ども達の中で、この時期に一体何が起こっているかを説明した上で、ケアレスミスの対策として今後どのように対策していくべきか、またそれによって昨日のSO、一昨日のマンスリーも各論点を「理解できているかどうか」を得点や偏差値から判断できない中、この時期の得点や偏差値ベースだけで志望校判定を行なっていくことの危険性についても触れていきたいと思います。
1: 「注意量一定」の法則
ある子どもが持っている「注意量」を一定と仮定すると、
「注意量」=「A:技術を使う時に使う注意量」+「B:ミスを防ぐ基本操作に使う注意量」
という式で表すことができます。
勿論、注意量の絶対値自体は向上しなくもないものの、その増加は緩やかであり一気には向上することは経験上ありえないものです。
従って、「A:技術を使う時に使う注意量」が増加する時期には、「B:ミスを防ぐ基本操作に使う注意量」に使うことができる注意量が減少するので、結果としてテストにおける「ケアレスミス」の発生率が増加するということになる。
そして、これは子ども達だけではなく、大人であっても全く同様であることも経営者として人を育てていても同じことが起こるため、人間に共通した法則だと仮定することができます。
2: 新しい技術を大量に消化した後、いかなる競技であれ、ミス発生率は上がる
では、どういう時に、「A:技術を使う時に使う注意量」が増加するのかというと、それは「新しく習いたてのものが沢山ある時期」です。
小学生5年生後半期から小学生6年生前半期は、学習する内容の量が多く、習いたてのそれぞれの技術についての習熟度が低く、まだ「手の内に入れられていない」「こなれていない」状態にあります。
そういった時には、「問題を読んで何を使うべきかを判断する」「判断した後のそれぞれの操作を行う」際に大きく注意を払う必要がある為、「A:技術を使う時に使う注意量」が増加します。
学び以外の競技で考えても同様です。
覚えたての新しい3回転ジャンプを本番で初めて使う時
覚えたての新しい変化球を初めて試合で使う時
新しいパスやシュート方法を初めて試合で使う時
どれも、そこに大きな意識を向ける必要がある。
その時、「新しいものに注意を取られているが故に」それ以外の部分の注意がおろそかになり足元を救われるミスが発生してしまうのは、「学び」以外でも同じことである種人間として当然の現象と言えます。
だから、年間のスケジュールを組み立てる時に5年後半から6年前半に「技術習得のピーク」を持ってくるのは大正解。
だから、この時期は当然、習いたての技術まみれだから、ミスが多発するのはある種仕方がない。
と、言うことが言えます。
仕方がない、経験・時間が解決するとも言えるが、それでも早く発生率を低減させていきたいというお気持ちもよくわかりますので、大きく二つの方針を以下に挙げておきます。
3: ミス発生率の低減①/新しい技術をいち早く手の内に入れること
一つ目は、
「注意量」=「A:技術を使う時に使う注意量」+「B:ミスを防ぐ基本操作に使う注意量」
の、「A:技術を使う時に使う注意量」を低減させることです。
「新しい技術をいち早く手の内に入れてしまう」ことで、そこに使う注意量を減らすこと。当たり前のことですが毎日変化球を投げて入れば、そこに意識を向ける量は減るはずです。
つまり、新しい技術の習得には段階があって、
1: 「理論を理解する」
2: 「問題を判別して、解法を正しく使うことが注意深くなることでできる」
3: 「上記が自然に苦もなくできる」
ということです。
スポーツや習い事をされていた方は非常に心当たりがあるかと思います。2の段階で発表会や試合に出てしまうと、本来はできたのに緊張感や相手がいることで、大崩れしてしまう確率が高くなるので、あくまでも3の領域までいかに引き上げて行くか、が重要になるのです。
つまり、ミスの発生原因と対策では、ミスそのものにアプローチするのではなく、「習得技術」の「習熟度を上げる」ことによって解決するというアプローチです。
具体的にやるべきこととしては、ミスが発生したポイントやその時期に学習したことポイントが2である可能性が高いため、回転数を上げて復習に取り組むことで、3の領域にまで各技術を引き上げて行くことができます。
呼吸をするように自然にできる足し算だと、みんな間違えない。
でも、複雑で一つ一つ考えなくてはいけない技術だと、プレッシャーをかければ間違えてしまう。
だったら、呼吸をするように自然に技術を使えるようになろうよ、という話です。
4: ミス発生率の低減②/たった1つの約束をすること
もう一つは、「B:ミスを防ぐ基本操作に使う注意量」が一定であっても、その注意量の中で最低限どこを気をつけるべきか、を型化してしまうかだと思います。
既に何度も閲覧頂いているかと思いますが、こちらのケアレスミス制圧の記事をご確認ください。
特に、たくさんの子ども達を見てきて頻繁に発生しがちなこととしては、
転記ミス
答えるべきものでないものを答える・逆を答える
あたりが多い為、
対策としては、
「転記の際に、数字に注意する。計算用紙と問題用紙を寄せる」
「解けたと思った瞬間に、問題の最後の1行を絶対に読み直す」
あたりを習慣化して頂くと良いでしょう。
ただし、注意も必要です。
でも、子ども達であってもケアレスミス対策は、一気に複数のことをさせてはいけません。
あたかも歩き方を矯正されるように感じるほど、ミスの是正は人間にとって相当なストレスです。
あくまでも一つだけを約束してそれだけを最低限守る、というところから始めて、一ヶ月に一つずつ程度、ミス対策を武装して行くことが望まれます。
5: ミスを織り込んだ「最終到達地点」の見極め
この時期に「志望校に到達できますか?」という質問をいただいた場合、
プロ家庭教師として「この時期」にみるポイントは、「最高到達点」です。
いくつかの模試の「最高到達偏差値」であり、「ミスが解消された場合の得点・偏差値」です。
更に、「単に正答しているかどうか」以上に、「解法が妥当かどうか、新しいことを吸収できているかどうか」です。
(4-5年生で習ったまま技術が更新されておらず遠回りに解いている場合、発達上の懸念があります。)
なぜなら、これから6年生前半戦もまだまだ新しいことを学習します。6年生後半戦でも「実践演習」の中で、スクランブルに学んで行くことも続きます。その中で「新しいものを学習する姿勢」がなければ、やはり伸び代は小さくなり、相対的に落ちて行く可能性が高いからです。
あくまでも見るべきポイントは、
「新しいことを学習できているか」
「最高点でどこまで到達できそうか」
です。
ミスが多発しやすい時期のミスが多発した結果の偏差値で判断するのは、この時期としてはやはり早計です。
とはいえ、いつもいつも「ミスがなかったら偏差値65なんだけどなー」という場合、往々にしてそれは「ミスではなく、細かな技術不足、訓練不足」であることが多く、丁寧な判断も必要だということも付け加えておきます。
以上です。
少しでも今後の学習のご参考になれば幸いです。